「楽しく生き、事件に屈しない」 名古屋主婦殺害、遺族の26年

1999年11月、名古屋市西区で主婦高羽奈美子さん=当時(32)=が殺害された事件は13日、発生から26年を迎える。 「いまが一番幸せ」。夫悟さん(69)が最も心に残る妻の言葉だ。一人息子のためにも「メソメソせず、頑張って楽しく生きる」と心に決め、「犯人に屈しない」姿勢を貫いてきたという。 奈美子さんは99年11月13日の白昼、2歳だった長男航平さんと自宅アパートにいたところを襲われた。 事件が起きるまで、一家は幸福に包まれていた。悟さんが分譲マンションを契約し、奈美子さんは女手一つで育ててくれた母親との同居を心待ちにしていた。マイカーを購入して運転にも慣れてきた。育児日誌には「つかまり立ちができるようになった」「1人で歩けたね」などと長男の成長の喜びをつづり、「2人目が欲しいね」と話し合っていた。 奈美子さんは「母が子どもの面倒を見る間は私が働きに出ればいいね。いまが一番幸せかもしれない」と語っていたという。悟さんも「幸せな未来が永遠に続く」と思っていたが、結婚生活は4年余りで突然断たれた。 事件の約半年後、悟さんが初めて取材を受けた時のことだ。「泣いて悲しむ姿は犯人が喜ぶだけ。お母さんは殺されたけど、へこたれないというストーリーにする」と決意。他の犯罪被害者遺族らと共に活動し、殺人など凶悪犯罪の公訴時効撤廃を実現した。26年、周囲に支えられながら精いっぱい生きて、事件に屈しなかった自負がある。 先月末、悟さんと高校の同級生だった安福久美子容疑者(69)が殺人容疑で愛知県警に逮捕された。悟さんは「肩の荷が下り、ほっとした」といい、奈美子さんに報告した。かつて一方的に好意を寄せていたという容疑者だが、動機は明らかになっていない。悟さんは事件の全容を知りたいと望んでいる。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加