トランプ氏にまた新たな爆弾「エプスタインの電子メール」…「被害者と数時間を過ごした」

43日間続いた連邦政府シャットダウンの解除が確定した12日(現地時間)、ドナルド・トランプ米国大統領がまた新たな大型爆弾に直面した。未成年者性搾取の容疑で起訴された後、刑務所で死亡したジェフリー・エプスタイン氏の犯罪をトランプ大統領が過去に少なくとも認識していたことを示唆する電子メールがこの日公開されたためだ。トランプ大統領は「エプスタインの詐欺劇」として悪材料の拡散阻止に乗り出したが、与党である共和党内の一部からも関連資料の全面公開を求める声が上がり、波紋が広がっている。 米下院監督委員会所属の民主党議員はこの日、「エプスタイン・ファイル」から見つかったものだとして、エプスタイン氏が恋人であり共犯関係にあったギレーヌ・マクスウェル氏、そしてジャーナリストで作家のマイケル・ウルフ氏とやり取りした3通のメールを公開した。 エプスタイン氏は2011年4月2日にマクスウェル氏に送ったメールで、名前が明らかにされていないある被害者が「彼(トランプ大統領)と私の家で数時間を過ごした。彼については一度も言及されたことがない」と語ったと記していた。特に「まだ吠えていないあの犬がトランプだということを知っておいてほしい」という一節がある。マクスウェル氏は返信で「私もそう思っていた」と答えている。 ◇エプスタイン氏「トランプは“まだ吠えていない犬”」 現在服役中のマクスウェル氏は、今年7月、トッド・ブランチ司法副長官との面談で、エプスタイン氏の犯行にはトランプ大統領は関与していないという趣旨の供述をした。その後、10月に連邦最高裁がマクスウェル氏の上告を棄却し、2022年にニューヨーク高裁の控訴審で言い渡された懲役20年の判決が確定すると、トランプ大統領に恩赦を求める考えを示していた。 民主党が公開した別のメールによると、ウルフ氏はトランプ大統領が共和党大統領選予備選に出馬した2015年12月、エプスタイン氏に送ったメールで「(今後メディアが)トランプにあなたとの関係を尋ねるだろう」と述べていた。エプスタイン氏が「どう答えるのが適切だろうか」と尋ねると、ウルフ氏は「彼が自ら引っかかるようにしておくといい。彼が(あなたの)飛行機に乗ったことも、家に行ったこともないと言えば、それはあなたにとって貴重な政治的資産になる。彼を救って恩を売ることもできる」と返している。 ◇エプスタイン氏「トランプは“あの少女たち”を知っていた」 また、エプスタイン氏は未成年者性搾取容疑で逮捕される直前の2019年1月31日、ウルフ氏に送ったメールの中で、当時現職大統領だったトランプ氏に言及し、「彼はあの少女たちのことを知っていた。彼(トランプ)がギレーヌに“やめろ”と言ったからだ」と記していた。「少女たち」とは、エプスタイン氏の性搾取犯罪の被害者である未成年女性たちを指すものとみられる。 下院監督委員会民主党幹事のロバート・ガルシア議員は「公開されたメールは、ホワイトハウスが隠そうとしていること、そしてエプスタインと大統領との関係の本質について明白な疑問を提起している」と述べた。 ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は「(民主党は)トランプ大統領を中傷する偽りの物語を作るため、電子メールを選択的に流出させた」と批判した。トランプ大統領もSNSへの投稿で、「民主党は政府シャットダウンなど、自分たちがひどい対応をした事案から世論の目をそらすために、エプスタイン詐欺劇をまた持ち出している」と強く反発した。共和党に対しては「本当に悪いか愚かな共和党員だけがその罠に落ちるだろう」と警告した。 ◇トランプ大統領「エプスタイン詐欺劇」反発 共和党およびトランプ大統領の支持基盤である「MAGA(Make America Great Again=米国を再び偉大に)」陣営の一部では、エプスタイン・スキャンダルを典型的な権力型汚職事件と捉え、捜査資料の全面公開を求めてきた。民主党がこの日エプスタイン氏のメールを公開した後、共和党下院議員も約2万3000ページに及ぶエプスタイン関連文書を公開した。 ニューヨーク・タイムズ(NYT)はこれについて、「スキャンダル文書を隠そうとしているという批判世論に対抗する口実を作り、党内の一部が進めるエプスタイン・ファイル全面公開の採決を阻止しようとする意図」と分析した。NYTによれば、共和党が公開した文書の中には、エプスタイン氏が2018年、ローレンス・サマーズ元財務長官とのメールでトランプ大統領を「精神異常に近い人物」と表現した部分も含まれているという。 ◇全面公開採決を阻もうと共和党を圧迫 トランプ大統領とホワイトハウスは、さらなる暴露を阻止するために慌ただしく動いた。この日ホワイトハウスは、エプスタイン・ファイル全面公開を盛り込んだ法案を採決にかけることを求める請願(強制付議案)に署名した共和党下院議員4人のうちの一人、ローレン・ボーバート議員を呼び出した。ホワイトハウスの状況室で、パム・ボンディ司法長官、カシュ・パテル連邦捜査局(FBI)長官らがボーバート議員に署名撤回を迫ったという。 トランプ大統領は、共和党下院内で同じく請願に署名したナンシー・メイス議員にも電話をかけ接触を試みたが、つながらなかったという。 ボーバート、メイス両議員を含む共和党議員4人は、いまだ撤回の意向を示していない。野党の民主党と一部の共和党議員を合わせて下院議員の過半数である218人がエプスタイン・ファイル全面公開法案の強制付議案に署名したことで、この法案はまもなく下院で採決にかけられる見通しとなった。マイク・ジョンソン下院議長は、この法案を来週の下院本会議で採決に付すと発表した。 法案が下院を通過しても、共和党が多数を占める上院では否決される可能性が高い。しかし、下院で採決が行われるという事実自体が、トランプ大統領に与える政治的打撃は相当なものになるという分析が出ている。NYTは「これはトランプと共和党にとって政治的災厄となりうる」とし、「共和党は大統領を守ることと、権力型スキャンダルの完全な公開を求める党内支持層との間で、危うい綱渡りをしている」と指摘した。

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