「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。 * * * 5月7日に参議院会館で「超党派 医療的ケア児者支援議員連盟」(医ケア議連)の第3回総会があり、【18歳の壁】についてお話をする機会をいただきました。 18歳の壁の中にもさまざまな課題があるのですが、今回は医ケア議連だったので、「人工呼吸器が必要な子どもの短期入所」をテーマとし、前半は、我が家の医療的ケア児の長女が長年利用していた短期入所先を18歳で卒業しなければならず、移行先として地域包括病棟に入院した体験談を、後半は専門職として現状の課題に関する情報提供をさせていただきました。 ■頭に浮かんだ「地域包括病棟」 このコラムを読んでくださっている方も、短期入所の施設が不足している話題について一度は聞いたことがあるという方が多いと思います。 私が住む地域も例外ではなく、現在、16歳以上の人工呼吸器が必要な子どもの短期入所の受け入れ先はゼロです。我が家の長女は、自宅から車で1時間半ほどの場所にある大学病院で受け入れてもらっていたのですが、この病院では「短期入所の受け入れは18歳以下」という規定があるため、昨年度いっぱいで利用できる施設がなくなることが少し前から分かっていました。 そこで頭に浮かんだのが「地域包括病棟」でした。私は社会福祉士を取得するための実習で地域包括病棟と療養病棟を担当しました。 どちらもいわゆる高齢者病棟なのですが、実は制度的には利用の年齢制限はありません。そして、実際に患者さんは、長女が使用している人工呼吸器とまったく同じ機器を使用している方ばかりでした。実際の医療機器も、胃ろうからの注入や吸引などのケアも、医ケア児と高齢者の医療的ケアはよく似ていることが分かったのです。