執(11月14日)

光陰矢のごとし。齢[よわい]を重ねたせいか。季節の巡りは気ぜわに映る。1年を振り返る季節が迫る。少々気が早いが、恒例の今年の漢字には「執」を推してみたい▼手かせをはめられ、ひざまずいている人の姿を表した象形文字だという(角川新字源)。「とらえる」「じっと保持する」の意味を持つ。こちらは「執念」に尽きる。名古屋市の主婦殺人事件で、被害者の夫は現場を残そうと26年間、2200万円もの家賃を支払った。「時効撤廃、犯人逮捕を」と訴え続け、じわじわと容疑者を追い詰めていった。あっぱれ▼3度目の挑戦で「執権」はかなった。わが国初の女性首相の滑り出しは上々のようだ。国民の支持率も比較的高い。更年期障害で苦しんだり、親族の介護を経験したり…。夜明け近くまで仕事をするとも明かした。タカ派と目されるが、親しみやすさを秘める。悩みをじっと聞いてくれそうな。「強い経済」も響きがいい▼それはさておき、防衛や財政に関わる国会発言に、眉をひそめる向きも少なくない。「執一」とは、一事のみかたく守り融通が利かない様を指すとか。気を張りすぎては、難局を乗り切れまい。時に「執心」を解いて、ご自愛を。<2025・11・14>

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