初演技に挑んだ中川未悠「私にとっての初めての映画出演が『ブルーボーイ事件』で本当に良かった」と涙ぐむ

映画「ブルーボーイ事件」公開記念舞台挨拶が11月15日、東京・TOHOシネマズ新宿で開催され、中川未悠、中村中、イズミ・セクシー、真田怜臣、六川裕史、泰平、飯塚花笑監督が登壇した。 本作は、高度経済成長期の日本で実際に起きた「ブルーボーイ事件」を題材に、性別適合手術の違法性を問う裁判に関わった人々の姿を描いた社会派ドラマ。本作が映画初出演にして初主演という大役を担った中川は、東京の喫茶店で働く女性・サチを演じた。サチは、ブルーボーイ事件で逮捕された医師から性別適合手術を受けた人物として、裁判で証言することを求められる役どころだ。 中川は「この映画をきっかけに初めてお芝居をさせていただいたのですが、右も左も分からないなか、監督をはじめスタッフさんや俳優の皆様に助けていただき、サチという役を演じることができました」と、晴れやかな表情を見せる。 飯塚監督は「私自身、性的少数者のひとりとして『ブルーボーイ事件』のことは知っていましたが、今回映画化するということで、『これは映画化するべき題材か』ということを確認するために、改めていろいろ調べ始めました」と語る。「そのなかで1960年代に性的少数者の方々が、いまよりも相当ハードルが高い時代に、果敢に生きていらっしゃっていた。本当に過酷なこともたくさんあり、これは歴史に埋もれさせてしまってはいけないと思い、映画化しようと強く思ったんです」と、経緯を述べた。 飯塚監督の熱い思いを受け、その期待に応えるべく奮闘した中川。「やはり法廷のシーンは、監督やスタッフさんから『この裁判のシーンは本当に大切だから』というのを何十回、何百回も言われていたので、『失敗できへんな』というプレッシャーがすごかったんです」と、極限の状態だったことを明かす。「セリフも結構長く、とても不安だったのですが、何とかやり切れた瞬間、安心感や開放感が押し寄せてきて、泣き崩れてしまったんです」と振り返っていた。 そんなとき、そっと寄り添っていたのが、サチの元同僚・メイを演じた中村。中川は「本当に支えていただきました」と中村に感謝を述べると、「中川未悠さんがもっている繊細な部分が、とてもサチに生きているなと思いましたし、初めてのお芝居という一度しかない時間に立ち合ってしまった……という思いで見ていました」と、優しい視線を中川に向ける。 映画は、昨日11月14日に、全国74館で封切られた。中川は「今回、監督やスタッフさん、共演者の方々など『ブルーボーイ事件』に携わってくださった人たちは、かけがえのない仲間だなと。頼りない主人公だったと思いますが、周囲の方々に助けていただきながら、何とか走り切ることができました。私にとっての初めての映画出演が『ブルーボーイ事件』で本当に良かったです」と、感極まり涙ぐみながら、思いを吐露していた。 飯塚監督も企画からトータルで8年間「魂を削って命を懸けて取り組んできました」と語ると、「みんなが本当に真心を込めて、世の中のためを思って作った作品です。決して莫大な宣伝費をかけるような商業的な作品ではありませんが、この作品が広がって、ひとつの成功例になるということが、この世の中にどれだけ影響を与えるのか……と思っています。作り上げた作品は子ども。もう独り歩きを始めていると思うのですが、皆さんもこの子どもの応援者になって、世の中に広げていただければ……」と、客席に呼びかけていた。

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