令和4年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で、殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)の第11回公判が25日、奈良地裁で開かれ、前回に続いて被告人質問が行われた。山上被告は、恨みを募らせていた旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)の友好団体に安倍氏がビデオメッセージを寄せたことに対し、「絶望と危機感を感じた」などと述べた。 被告人質問は前回公判から始まり、2日目。前回は弁護側が、被告が10歳だった平成3年に母親が旧統一教会に入信した時期から、17年に海上自衛隊で自殺を図ったころまでを中心に尋ねた。被告は、母親の教団への多額献金によって家族間で不和が生じ、「人生や考え方が根本的に変わってしまった」と振り返っていた。 この日も時系列に沿って尋問が続いた。弁護側は27年に母親の多額献金を恨んでいた兄が自殺したことに触れる。 ■「母の中では、兄は天国で幸せだと」 弁護人「(兄の)遺体と対面したときは」 被告「非常にショックだった」 弁護人「逮捕後に面会した際、『自分が兄を殺したようなものです』と言っていたが」 被告「自殺前に電話がかかってきたが、突き放した記憶がある。旧統一教会に関して協力するなり、実家に帰って金に困らないよう一緒に生活するべきだった」 兄の葬式で、被告は旧統一教会の関係者に不信感を抱く。兄は生前、献金に不満を持っていたにもかかわらず、棺の前で旧統一教会流の「式」を始めようとしたからだ。 被告「『帰ってくれ』と言ったが、『分かりました』と言いつつ、式を始めた。怒鳴ったりつまみ出したりしないと止まらないが、棺の前ではばかられた。『なんてことをするのか』。こういうことをこれまでもしてきたし、これからもしていくのだろうと思った」 その後、被告は一度は未遂で終わった自殺を再び考えるようになる。しかしさらなる自殺は図らず、旧統一教会幹部の襲撃を企てる。考えが変わったきっかけは母親の兄に関する言動だった。 被告「母の中で、兄は天国で幸せに暮らしていることになっていた。それは献金したおかげで、兄が生前苦しんでいたのは(教団から献金額の一部の)金を返金させたから、という理解になっていた」