「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの社長だった大東(おおひがし)隆行さん=当時(72)=を射殺したとして、殺人と銃刀法違反罪に問われた特定危険指定暴力団工藤会系組幹部、田中幸雄被告(59)の初公判が26日、京都地裁で開かれた。検察側は冒頭陳述で、現場付近で見つかったたばこの吸い殻から被告のDNA型が検出されたほか、被告の携帯電話には「見張りを怠ってはならない」などのメモが保存されていたといった間接証拠を明らかにした。 検察側の冒頭陳述によると、事件後、王将フードサービス本社(京都市山科区)の東側通路で、たばこの吸い殻が2本見つかった。フィルター部分などに付着した唾液をDNA型鑑定した結果、2本とも被告のDNA型と一致した。吸い殻が見つかったのは、従業員が日常的に掃除している場所で、事件前日の朝に吸い殻は落ちていなかった。 現場から逃走したバイクは約1・4キロ離れた駐車場で見つかり、ハンドル部分から銃撃の際に残る「射撃残渣(ざんさ)」が確認されたほか、現場付近のタイヤ痕とも一致した。 このバイクは盗難車だったが、盗まれたのと同じ時間帯に京都市内の飲食店駐車場でも、別のミニバイクが盗まれていた。飲食店の防犯カメラには走り去る軽乗用車が写っていた。 逃走車のディーラーオプションのエアロパーツなどを捜査した結果、被告の幼なじみの車と一致した。被告は当時、車を2台持っていたにもかかわらず、事件が起きた平成25年に2度、幼なじみから車を借りており、その1回はミニバイクの盗難時期と一致していた。 事件発生から半年後、被告は携帯電話に「警戒を解いてはならない。息を潜めて行動しろ。深海魚のように人知れず泳ぎ回れ」などとメモを保存していた。逃走車両に関する報道が出た後には、幼なじみに車の掃除を依頼した。 被告は所属していた福岡県内の組事務所に毎日のように出入りし、配下組員を指揮する立場にあったため、数日間にわたって事務所を離れることはなかった。 事件は25年12月19日早朝に起きたが、被告は組員に対し、同12月17~19日ごろに「旅行に行く。電源を切るので電話も出られない」と連絡し、その約3日間、事務所に現れず、音信不通だった。