近畿2府4県の優秀な警察官をたたえる第139回「近畿の警察官」(産経新聞社提唱・和歌山県信用金庫協会など協賛)に、和歌山県警から田辺署生活安全刑事課の盗犯係の山本幸弘警部補(59)が選ばれた。41年7カ月に及ぶ警察人生のうち26年半を刑事部門で勤務し、連続放火事件や少年窃盗グループの検挙などの実績を上げた。表彰式は11月27日に大阪市天王寺区の大阪国際交流センターで行われる。 和歌山県田辺市出身。自宅近くにある小学校の児童の安全を守る交通指導員だった父親の姿を見て「自分も人のためになることをしたい」と警察官を目指した。県立田辺工業高校卒業後の昭和59年に県警に採用された。 最初は交通警察官になりたかった。機動隊などを経て、白浜署の交通課に配属された。同課での勤務時に管内で起きた強盗殺人事件の捜査本部に応援として入り、事件捜査の方法や取り調べの書類などを見て学んだ。それ以降、同署や新宮署、串本署(当時)、田辺署で犯罪捜査を行う「紀南の刑事さん」として勤務した。紀南地域の住民の人柄にも触れ「出会った多くの方が協力的で、こちらが誠実に向き合えば、誠実に返してくれる」と感謝する。 平成22年に少年グループがスーパーやガソリンスタンドから相次いで金庫などを盗んだ事件では総括係長を務めた。捜査の取りまとめを行うとともに、現場を何度も訪れ、犯行の手口を分析するなどして事件の解明につなげた。逮捕した少年ら10人は県外を含めて54件の犯行を自供。その後の立ち直りを考え、保護者らにケアの必要性を伝えた。 上富田町内で発生した連続放火事件では、現場付近で住民への聞き込みを重ねたことで被疑者の男が浮上。男が仕事から帰宅した夜間の行動確認を1、2カ月にわたって粘り強く行った。別の傷害事件で逮捕された男は過去の放火についても認め、計9件の事件解決に貢献した。 経験を積む中で「事件の対応にあたる刑事は、一番困っている人を助けることができる。安心を与えられる存在」だと思うように。 被疑者と対峙(たいじ)するときには「悪いことをするのには理由がある。やらざるを得なかった状況もあるかもしれない」と考えるようにしている。しっかりと話を聞き、罪と向き合ってもらうことで、再び罪を犯すのを防ぎたいとの思いからだ。