国内最大規模のスカウトグループ「ナチュラル」に捜査用カメラの画像を提供したなどとして、警視庁暴力団対策課の警部補が逮捕された事件で、カメラの設置場所のリストも漏洩(ろうえい)していたとして、警視庁は3日、地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで、同庁警部補の神保大輔容疑者(43)を再逮捕した。認否を明らかにしていない。 ■カメラの設置場所リスト提供 再逮捕容疑は7月下旬、捜査のためにメンバーの関係先など20カ所以上に設置したカメラの場所などをまとめたリストをグループ側に提供したとしている。 警視庁によると、神保容疑者は4月、課内の配置換えでナチュラルの捜査から外れていたが、貸与されたパソコンから捜査情報にアクセスする権限があり、閲覧してリストを作成。ナチュラルが組織内の連絡などに使うため、独自に開発した特殊なスマートフォンアプリで伝えていた。 神保容疑者は4~5月に捜査用カメラの画像をグループ側に提供したとして逮捕されていた。警視庁は容疑者宅から現金900万円を押収し、事件との関連を調べている。 ■家宅捜索で消えた2人の幹部 現職の警視庁警部補による捜査情報漏洩事件が起きた。警察が壊滅に総力を挙げる「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の捜査に影響した可能性も指摘され、国会質問になるなど波紋が広がった。犯罪に最前線で対峙(たいじ)していた警部補はなぜ、寝返ったのか。 「探せ!」 今年1月、全国数十カ所で行われたスカウトグループ「ナチュラル」の家宅捜索。警視庁などは職業安定法違反容疑で男2人を逮捕したが、一部の幹部が姿を消していた。情報が抜けているのではないか-。報告を受けた警視庁の捜査幹部は激怒していたという。 それから約10カ月後、内部の人間による情報漏洩事件が明らかとなった。逮捕された神保容疑者は組織犯罪捜査の経験が豊富で、ナチュラルの事件でも最前線で捜査に当たっていた。「裏切り」ともいえる行為に、同僚の捜査員らにも衝撃と落胆が広がったという。 問題は国会にも波及した。11月13日の参院予算委員会で、事件への認識を問われた赤間二郎国家公安委員長は「国民の信頼を損なうものであり、言語道断であり、極めて遺憾だ」と断じた。