「原因不明の潜在性脳梗塞」の原因は不整脈/医学博士・鵜野起久也

不整脈IQを鍛えよう<11> 頻脈徐脈症候群(TBS)には頻脈を来す心房細動の治療としてカテーテルアブレーションがありますが、この「心房細動」と「カテーテルアブレーション」については後の連載に譲ります。今回は植え込み型心電計の、もう1つの適応についてです。 「原因不明の潜在性脳梗塞」と呼ばれるものがあります。潜在性脳梗塞とは“かくれ脳梗塞”と呼ばれることもあります。全く気づかないうちに起きている脳梗塞で、症状の出ないほど小さな梗塞のことです。高血圧や糖尿病などで生じるコレステロールのかすが首の動脈の壁にべっとりとたまり、時に血の流れで脳に飛んで脳梗塞を起こします。ところが「原因不明」とは、首の血管もきれいなのに症状のない微小脳梗塞のことです。“オカルト脳梗塞”です。 原因は不整脈です。脳梗塞を引き起こす不整脈があるのです。犯人は心房細動です。ごくごく小さな脳梗塞を引き起こすことがあり、植え込み型心電計の適応とされています。昨年発表された日本を含む12カ国の多施設共同研究では、植え込み型心電計でなんと28・3%の患者に心房細動が発見されています。特に日本では、植え込み当初から他のどの国よりも検出率が高く、より早く心房細動に対する治療ができるという結果でした。素晴らしいことですね。 「不整脈は現行犯逮捕が基本」ですので長時間心電図検査は、不整脈を確実に正確に見つけるためにどんどん進歩しています。心電図解析に人工知能(AI)が導入され始め、パッチ型の“ジオ”と呼ばれるAI解析型長時間心電計も活用が始まりました。スマートウオッチもさらに進化を遂げるでしょう。不整脈はもはや袋のねずみでしょうか。

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