特検と尹前大統領の妻側、最後弁論で4時間の激論…3つの主な争点とは

ドイツモーターズ株価操作などの疑いで拘束起訴された尹前大統領の妻、キム・ゴンヒ被告に、ミン・ジュンギ特別検察官(特検)チームは3日、懲役15年を求刑した。8月29日にキム被告が拘束起訴されてから約3カ月でのことだ。 3日、ソウル中央地裁刑事27部(ウ・インソン裁判長)の審理で開かれたキム被告の結審公判で、特検チームは「資本市場法違反および斡旋収賄の疑いに関して懲役11年と罰金20億ウォン(約2億1千万円)、追徴金8億1144万ウォンを、政治資金法違反の疑いについては懲役4年および追徴金1億3720万ウォンを宣告」するよう要請した。法廷に立ったキム被告の最後の発言は「不当だと感じる点が多い」というものだった。キム被告は「私の役割と私が持っている何らかの資格に比べ、誤っている点が多すぎるように思う。だからといって特検が言うように、それはちょっと、争う余地があると思う」とし、「とにかく私によって国民に大きな心配をかけた点については大変申し訳ない。深く反省する」と述べた。この日、4時間にわたる論告と最終弁論で、特検チームとキム被告側は、資本市場法違反、政治資金法違反、斡旋収賄容疑について、PPT資料を用い、争点を一つひとつ取り上げるやり方で激論を繰り広げた。両者の主な主張を争点別にまとめた。 ■「相場操作、知っていた」対「公認認証書の発給方法も知らない」 キム被告はドイツモーターズの株価操作に加担し、8億1000万ウォンの不当利益を得た疑いが持たれている。特検チームは、キム被告が相場操作の事実を明確に認識しており、共謀関係があったと強調した。特検チームは「被告は未来アセット証券の口座でドイツモーターズの株式が売買されている現況を知らなかったと主張してきたが、ドイツモーターズの売買内訳を直接確認してきたことが証券会社の社員との通話で確認される」とし、「被告は自身が口座を任せれば、どんな形で利益を分配するか明確に認識しており、この株売買が非正常的な方式によるものだと知っていた。これはドイツモーターズが相場操作されていることを認識していたことを示す」と述べた。 特に最近逮捕・拘束されたドイツモーターズ株価操作事件の主砲(特定の株価を引き上げる仕掛け人)のL容疑者は、キム被告の犯行であるか否かについて、「キム被告は知らなかっただろう」との過去の検察による取り調べでの供述とは異なり、特検チームの取り調べでは「キム被告も関与しただろう」という趣旨の正反対の供述をしたという。特検チームは、L容疑者の態度変化はキム被告がドイツモーターズ株価操作について知っていたかどうかを決める重要な事項だとみて、それらの内容が記されている尋問調書を裁判に証拠として提出したという。 特検チームは、主砲の指示および要請事項に協力する方式で、主犯格の統制に従い、元金ないし損失の保障約定が存在したこと▽他人名義の口座を動員していたこと▽共犯者間で必要に応じた資金支援を行っていたことなどから、ドイツモーターズの株価操作の共犯者の判決で成立した共犯性の基準をキム被告がすべて満たしていると判断した。 特検チームは「全体期間の馴合・仮装売買101回、相場操作注文が3327回に達し、犯行の規模、期間、加担者数に照らしてみると、事案は非常に重大だ」とし、「(キム)被告は虚偽の主張をおこなったうえ、陳述を翻し続けるなど、罪質がさらに悪く、被告の主張全てが捜査機関で確認された客観的証拠に明確に背馳し、一つひとつがこの事件の共犯者として犯行に加担したことを明確に立証している」と述べた。 一方、キム被告の弁護団は「口座は貸したが、具体的な取引情報については全く知らなかった」とし、「被告は利用されており、このような(相場操作の)事実を知っていたら、絶対に応じなかっただろう」という立場を示した。弁護側は「特検は過度な収益分配、借名口座利用、株取引に対する専門性などを根拠に、被告が資本市場法違反の共同正犯だと主張している」とし、「(被告が受け取った)4700万ウォンは損失補填金ではなく、このような私的な取引では約定されない収益分配はよくあることであり、高率の収益分配をした点だけで共謀関係を立証することはできない」と反論した。 特に弁護側は、キム被告には株式投資についての専門性がないことを強調した。弁護側は「被告が証券会社の社員に『公認認証書をどのように発給してもらうのですか』と話した内容がある」とし、「また新株引受権は権利売買が可能だという事実は株式投資の一般人にも常識だが、被告だけが権利売買が可能だと考えて話した内容もある。このような事情から、被告には株式投資の専門性がないとみなすべきだ」と述べた。 ■ミョン・テギュン氏の世論調査…「キム被告と合意」対「共謀の根拠はない」 尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の大統領選予備選挙期間中、ミョン・テギュン氏から尹前大統領に有利な世論調査の結果を無料で提供された政治資金法違反容疑の主な争点は、世論調査結果が政治資金に当たるかどうか▽被告が政治活動をする人物かどうか▽ミョン・テギュン氏が尹前大統領に有利な世論調査をして公表したかどうかなどだった。 特検チームは「(以前の判例で)裁判所は、世論調査にかかる費用は政治資金に当たり、金銭的価値があると判示しており、公職選挙法もやはり選挙に関係する世論調査費用は選挙費用とみなしている」とし、「被告は尹前大統領の当選のために努力し、主要な政治状況が発生すれば共に解決策を模索した政治的共同体に当たり、自ら政治活動をする者に該当する」と述べた。さらに「被告はミョン氏が世論調査の結果を一方的に送ってきただけで、依頼した事実はないとして、寄付ではないと容疑を否定しているが、被告人が積極的に世論調査問題の解決を要求するなど、世論調査の実施に同意があったことが確認される」と述べた。 一方、弁護側は「ミョン氏が送った世論調査結果は他の政治家たちにも転送され、被告には特に価値のない内容」だとし、「ミョン氏が広報用として実施し、それを送った人脈リストに被告人と尹前大統領を追加したに過ぎない」と主張した。弁護側は「被告は政治活動をする人に該当しない」とし、「ミョン氏も認めたように、被告と尹前大統領がミョン氏と共謀したと認めるいかなる根拠もない」と主張した。さらに「被告はキム・ジョンイン、イ・ジュンソクとの意思疎通のためにミョン氏に会っただけで、世論調査の契約について議論したこともない」と述べた。 ■「グラフのネックレス」の授受を否定…「受け取ったとしても6千万ウォンに過ぎず」 特検チームは、キム被告が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)から受け取ったシャネルのバッグや靴、グラフのネックレスなどは請託の見返りだとみている。シャネルのバッグなど計8293万ウォン相当の贈り物を受け取り、旧統一教会の各種懸案を解決したということだ。特検チームは、「被告人は旧統一教会から請託を受けたことはなく、単なる贈り物だと主張しているが、その意図を十分に認識していた。尹前大統領候補時代に旧統一教会が大統領選挙に介入して助けたということを知っていたとみなければならない」とし、「『コンジン法師』ことチョン・ソンベ氏を通じてユン・ヨンホ元本部長を利用して癒着関係が強固に形成され、十分共謀関係が認められる」と述べた。さらに「カンボジア公的開発援助(ODA)などは国務調整室、企画財政部、外交部などの担当業務に当たり、教育部長官の表敬訪問などは行政各部の長官などの公式日程に関与したもので、公務員の職務との関連性が認められる」と述べた。 しかし、弁護側は「シャネルのバッグを受け取った事実は認めるが、それは儀礼的な贈り物であり、グラフのネックレスは受け取ったことがない」と改めて否定した。弁護側は「シャネルのバックは800万ウォン、1200万ウォン水準に過ぎず、チョン・ソンベ氏の顧問料にもはるかに及ばない」とし、「この2千万ウォンを受け取って国連第5事務局を大韓民国に設置し、カンボジアなどへのODAを政府関係者を動員して処理するということはあり得ない」と反論した。さらに「グラフのネックレスもやはり、受け取っていなかったが、価格が6千万ウォン相当に過ぎず、6千万ウォンの金品提供だけで教育部長官の表敬訪問、ODAなどの数兆ウォンの予算が投入されなければならない請託が可能なのか、極めて疑問」だと主張した。さらに、「先日、民主党で射撃連盟副会長が(特定の宗教団体のメンバーを)民主党の党員に加入させようとした疑惑がある」とし、「キム女史事件に対し特検を実施するなら、民主党はより深刻な事案であり、当然特検を進めるべきだ」と主張した。 チャン・ヒョンウン記者 (お問い合わせ [email protected] )

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