「何をしていた」と問われしどろもどろ…介護施設で2人殺害か「元女性職員」両親と別居の親族トラブル

「私は空気を注入していません。殺害していません」 被告は、こう供述して起訴内容を否認した。 12月10日に水戸地裁で開かれたのは、殺人罪などに問われている高齢者介護施設の元女性職員・赤間恵美被告(39)の初公判だ。起訴状によると、赤間被告は’20年5月から7月にかけ勤務していた茨城県古河市内の介護施設でいずれも男性の70代A氏と80代B氏の2人を殺害。点滴チューブに空気を注入し、血液が循環しないようにしたとされる。 「赤間被告は約3ヵ月の鑑定留置で刑事責任が問えると判断され、’22年4月に起訴されました。赤間被告の関与を裏づける直接の証拠は皆無ですが、検察側は『仕事になじめずストレスがあった』と指摘。状況証拠で立証する意向とみられます。 一方の弁護側は『(被害男性は)心臓の病気で亡くなった』と訴えました。証言者は介護施設関係者や医療の専門家など多岐にわたり、裁判は85日に及びます。公判は全部で60回も予定されているんです」(全国紙司法担当記者) 『FRIDAYデジタル』は赤間被告の逮捕直後から、不可解な事件についてたびたび報じている。赤間被告が抱えていた親族トラブルなど、事件の背景を紹介したい――。 ◆すぐに自主退職 「何をしていたんですか」 同僚に不審な行動を問いただされた赤間被告は、しどろもどろに。明確な説明をせず、就業前に帰宅。そのまま自主退職したという。 ’21年12月8日、茨城県警が逮捕したのが赤間被告だった。前年7月6日の昼過ぎ、勤務先の介護施設に入所していたA氏を殺害した容疑だ。A氏は、健康状態に大きな問題がなかったにもかかわらず容体が急変。搬送先の病院で死亡が確認された。 「当時、Aさんは4人部屋のベッドで寝ていました。赤間被告は、Aさんの足につけられた点滴用チューブから、空のシリンジ(注射筒)を使って大量の空気を静脈に注入した疑いが持たれています。異様な行動を、同僚に目撃されていたんです。 赤間被告は同僚から問いただされると、まずいと思ったのかすぐに自主退職しました。施設は赤間被告に説明を求めましたが、納得のいく回答は得られず警察に相談。警察は職員やAさんが搬送された病院などへ聞き取り調査をし、赤間被告の逮捕に至ったんです」(全国紙社会部記者) 赤間被告は、事件の15年ほど前に看護師の資格を取得した。埼玉や栃木県内の病院で看護師として働いていたが、事件の起きた施設では介護職員として勤務。点滴やシリンジを扱える立場になかった。 「赤間被告が施設で働き始めたのは、’20年の春からです。明るく気さくな性格で、知人たちの評判も良かったとか。前年11月に結婚した夫のために、早起きして弁当を作っていたと聞いています」(同前) ◆考えられる2つの犯行動機 評判の良さの一方で、親族トラブルも多かったという。 「当初は、結婚した夫の両親と暮らしていたそうです。しかし、両親の財布から現金がなくなるなどの問題が頻発。家族関係が悪くなり、’21年夏ごろから両親と別居していました」(別の全国紙記者) 赤間被告が殺人容疑で逮捕されたのはA氏の件だけではない。’20年5月に同様の手口で施設にいたB氏の命を奪ったとして、警察に身柄を拘束されているのだ。 動機はなんだったのだろうか。元神奈川県警の刑事で、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が語る。 「容疑者は看護師の資格を持っています。大量の空気を注入すれば、どんな結果になるかわかっていたハズです。単なるイタズラではありません。明確な殺意を感じます。考えられる犯行動機は2つ。1つは被害者への個人的な恨み。もう1つは、給料や勤務体系など施設への強い不満でしょう。 当然、不満があったからといって殺人を犯していい理由になりません。今回の事件は密室に近い状態での犯行です。直接的証拠を取得するのは難しい。検察側は状況証拠を積み上げ、被告以外に犯人はありえないと裁判員に印象づける意向だと思います」 公判は長期に及び、判決は’26年7月7日に言い渡される予定だ。

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