2025年11月に発生した海外での大規模な災害、事故・事件の案件について振り返ります。 ※被害の内訳については、原則的にレスキューナウによる情報取りまとめ時のものです。それぞれの記事の最終更新日以降の状況については反映されていないことがあります。 ●11月 【事故】アメリカ貨物大手UPSの貨物機が墜落、14人死亡 [被害]死者14人 負傷者23人 2025年11月4日17:15頃(日本時間5日07:15頃)、アメリカ南東部ケンタッキー州にあるルイビル・モハメド・アリ国際空港近くで、ハワイ州ホノルルに向かっていたアメリカ貨物大手のユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)の貨物機が離陸直後に墜落し、機体は炎上した。さらに、墜落した機体は空港近くの石油リサイクル施設など複数の建物を破壊した。この事故で、乗員3人が死亡したほか、地上にいた11人が死亡し、死者は合計14人となった。また、23人が負傷した。 国家運輸安全委員会(NTSB)は、報告書で離陸時にエンジンから火が上がり、脱落したと発表している。また、エンジンを主翼に固定する部品に疲労亀裂や過負荷の兆候があったとも指摘されている。 墜落した機体はマクドネル・ダグラス社の「MD-11F」で、米連邦航空局(FAA)は「MD-11」と「MD-11F」を運航停止とした。UPS社によると事故機とは別に26機の「MD-11」を保有しているという。 【事故】香港の高層住宅7棟で大規模火災、159人死亡 [被害]死者159人 安否不明31人 2025年11月26日15:00頃(日本時間16:00頃)、香港北部新界地区の大埔区にある高層住宅群「宏福苑」で火災が発生し、31階建ての高層住宅8棟のうち7棟に延焼した。いずれの棟でも多数の住民が取り残される中、最上階まで延焼し、火災発生から8日後の時点で159人の死亡が確認され、31人が安否不明のままとなった。 この高層住宅では、近接している全ての棟で外壁などの改修工事が行われており、現場には竹製の足場に張られた防護ネットや発泡スチロールの建材などが設置されていた。いずれも防火基準を満たさない可燃性の素材が用いられており、そのため急速に別棟まで延焼し、上層階まで燃え広がった可能性が指摘されている。また、設置されていた足場などにより消火活動や救助が難航した。 現場の高層住宅は、8棟に約4000人が暮らしており、高齢者の多くは避難できなかったものと見られている。犠牲者の中には、香港に多い外国人メイドとして、住み込みで働いていたフィリピンやインドネシアからの労働者も含まれていた。 火災現場などでは、市民が追悼や原因究明を訴える中で、抗議活動や反政府デモへの発展を恐れた香港政府が集会を開いた市民を逮捕した。一方で29日から3日間を追悼期間とし、半旗の掲揚や記帳台の設置を行ったほか、警察や汚職取締機関の廉政公署が、この火災に関係した建設コンサルティング会社などの役員合わせて15人を逮捕し、工事を巡る不正を調査する動きも見られた。また、香港政府の指示により、全ての大規模建物改修工事の現場で、防護ネットの撤去も行われた。 【自然災害】東南アジアを中心に大雨による大きな被害 [被害]死者2100人以上(インドネシア1006人、スリランカ約850人、タイ267人など) 2025年11月15日頃から月末にかけて、東南アジアの広い範囲とスリランカで大雨が続き、各地で大きな被害が生じた。一連の大雨による死者は、インドネシア、スリランカ、タイを中心にこれまでに2100人を超えた。 タイでは、北東モンスーンの影響で南部を中心に11月22日を中心に大雨となり、22日の日降水量が600mmを超えるなど300年に一度と言われる記録的な大雨となった。ソンクラー県ハートヤイ(ハジャイ)では高さ2mを超える浸水に見舞われ、住民に加え外国人観光客が孤立、救出される事態となった。このソンクラー県を中心にタイでは267人が死亡した。 インドネシアでは、赤道に近いマラッカ海峡で極めて異例となるサイクロン「セニャール」(センヤール)が発生し、スマトラ島では11月25日から26日にかけての2日間で600mmを超えるような大雨となった。スマトラ島では北部を中心に洪水や地すべりが相次ぎ、これまでに死者は1006人となった。アチェ州では現地のインフラ整備にあたっていた日本人8人が一時孤立し、インドネシア政府が手配した航空機で避難した。 スリランカでは、11月28日にサイクロン「ディトワ」が東海岸を通過し、北部州バブニヤでは27日の日降水量が356mm、28日までの一週間の総降水量が797mmに達した。各地で洪水や土砂崩れが相次ぎ、死者は約850人と今世紀に入って最も死者の多い大雨災害となった。 今回の大雨の要因として、日本の気象庁は、インド洋からの西風と太平洋熱帯域の東寄りの貿易風がともに強く、これらの風が収束する東南アジア周辺でサイクロンを相次いで発生させるような積乱雲の活動が活発化したことに加え、東南アジア周辺の海水温が高く大量の水蒸気が供給されたことを挙げている。