【三菱UFJ貸金庫窃盗事件】女性被告の「銀行のお金には手をつけないポリシー」を“崩壊させたもの”

2025年『FRIDAYデジタル』が報じてきた数々の事件の中から、選りすぐってお届けする【2025年凶悪&重大事件ワイド】。今回は銀行への信頼を大きく揺るがすこととなった『三菱UFJ貸金庫窃盗事件』をお届けする。 1月14日、警視庁は三菱UFJ銀行・元行員の山﨑由香理被告(当時46)を逮捕した。貸金庫から客の金塊19.5㎏(約2億6000万円相当)を盗んだ疑いだ。 山﨑被告はこの逮捕容疑のほかにも、’20年4月から’24年10月までの4年半にわたり、勤務していた練馬と玉川の支店で、客の貸金庫から現金や貴金属などを窃盗した疑いが持たれていた。貸金庫利用者の問い合わせで事件が’24年10月に窃盗が発覚。社内調査で犯行を認めた山﨑被告は同11月14日付で懲戒解雇となり、同行は12月下旬に警視庁に刑事告発している。当時の『FRIDAYデジタル』では犯行の詳細について次のように報じていた(注・山﨑被告の事件当時の姓は今村のため、過去記事ではそのまま表記しています)。 《「昨年9月、三菱UFJ銀行練馬支店に勤務していた際に顧客2人の貸金庫を勝手に開け、金塊を盗んだ窃盗容疑で逮捕されたのですが、金塊はすでに都内と千葉県内の合計7ヵ所の質店に質入れされており、今村容疑者も容疑を認めているようです。ほかにも多数の余罪があり、被害者は60人以上で、被害総額は17億円を超えるとみられています。 今村容疑者は銀行が保管していた貸金庫のスペアキーを管理する立場にあり、スペアキーを使って犯行に及んでいました。金庫内の現金がなくなったことがバレそうになると、別の貸金庫から補填していたこともわかっています。貸金庫の利用者が想定外のタイミングで来店した際は、貸金庫の故障を装って追い返していたようです。巧妙な隠ぺい工作により、彼女の犯行は4年半という長きにわたり、露見しませんでした」(全国紙社会部記者) 今村容疑者は窃盗して得た利益の大半を、FXや競馬につぎこんでいたとみられている。捜査関係者によると「FXや競馬に5年以上にわたって相当な金額をつぎこんでいた。現時点でわかっているだけでも、FXの損失は10億円はくだらない」という》 ◆「裕福な家庭という印象でしたね」 莫大な損失を出し、顧客の金品に手をつけるほどお金に窮していたとみられる山﨑被告。しかし、本誌記者がその自宅を訪れると、とてもそんな暮らしぶりには見えなかったようだ。 《FRIDAYデジタルの記者が今村容疑者の自宅を訪れると、一軒家の立派な本宅もさることながら、隣接する巨大な月極駐車場が目を引いた。自宅と合わせると260坪を超える広大な土地で、資産価値も4億円はくだらないといわれる。 今村容疑者は昨年11月に懲戒解雇されるまで営業課支店長代理の役職についていた。さらに駐車場の家賃収入が月30〜40万円ほどあったとみられ、近所ではちょっとした資産家として有名だったという。 今村容疑者の月極駐車場を利用していた近隣住民が語る。 「先月末、賃料を払いに行くと今村さん本人が対応してくれました。とくに変わった様子はなく、元気でしたよ。『来年もよろしくお願いします』という感じでした。たしかお子さんはいなくて、今村さんと旦那さんとそのお義父さんの3人暮らし。お義父さんも昔は銀行に勤めていたから、ここらへんでは立派な部類に入る家を建てて、駐車場の経営もされていた。裕福な家庭という印象でしたね」》 別の近隣住民からは「夫婦仲は良かった。明るい家族という感じ」と証言も。だが、本誌記者が灯りが点いていた山﨑被告の自宅に家族の話を聞くべく、インターホンを押しても一切、応答はなかった。 近隣の人たちの目からは裕福で幸せに見えていた山﨑被告の家庭だったが、中には今回の事件の〝予兆〟を感じていた住民もいたようだ。 《「去年の10月くらいから急に姿を見なくなったんだよね。以前は、出勤時間なのか、朝の決まった時間に家から出てきていたんだけど。年明けに見かけた時は、周りからの目線を気にしているような雰囲気でしたね。玄関を使わずわざわざ裏門から隠れるようにして入っていましたから。それまでは会えば挨拶をしてくれる明るい方でしたから、今回の逮捕には本当に驚いています」(別の住民)》 逮捕の時点での容疑は2億6000万円相当の金塊を盗んだ容疑に過ぎなかった。山﨑被告が60人以上から盗んだとみられる金品の総額は17億円を超えるといわれ、事件の全容解明が待たれていた。 ◆「離婚されるのが嫌だった」 10月16日、東京地裁で山﨑被告に言い渡されたのは懲役9年(求刑懲役12年)の実刑判決だった。 起訴されたのは約3億3000万円相当の金塊と、現金約6000万円などを盗んだ罪だった。事件当初の17億円という金額から大きく目減りしたのは、貸金庫に実際にいくら入っていたのかを証明することが困難だったためだという。 裁判で明らかになったのは、犯行にいたるまでの山﨑被告の“孤独”だ。 以前にもFXと競馬で約1200万円の借金を作り、’13年に裁判所に個人再生手続きを申し立てていた。このときは夫の協力もあり、3年ほどで完済したが夫には「もう一度ギャンブルをしたら離婚する」との誓約書を書かされたという。’17年ごろから再びFXに手を出すようになり、前回とはケタが違う10億もの借金を抱えてしまうことになる。 「どんなに借金があっても、銀行のお金には手を付けないというポリシーがあった」と証言した山﨑被告が貸金庫のカネに手をつけるようになったのは、「(夫の)タンス預金に手を付けたのがわかってしまって回収され、どうにもならなかった」からだという。離婚されるのが嫌で借金について相談できる人がおらず「衝動的、病気だと思うが、最終的にはそういうことにいたってしまった」と明かした。 山﨑被告によれば、立件されていないものを含めると4年半の間に「100人ほどから17億~18億円相当」を盗んだという。ただ、犯行を繰り返すことにもいつしか限界を感じていたようだ。貸金庫の利用者から「預けていた金がなくなっている」と問い合わせがあったことを知らされた被告は、犯行に使った鍵や盗んだ金額のメモを銀行に提出し、すべてを打ち明けた。 小野裕信裁判官は判決の理由について「安全と信じて貸金庫を利用した被害者に落ち度はない。まれにみる悪質な犯行だ」と指摘、さらに「借金の穴埋めのために短絡的に犯行を続けた経緯に酌むところはなく、刑も見合ったものにすべき」と述べた。 山﨑被告側は判決を不服として控訴している。

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