地価が高騰する大阪を舞台に活動する新たな地面師グループとみられる存在が発覚した。本来の所有者が知らぬ間に、いかにして不動産登記を書き換えたのか。大阪府警に逮捕された司法書士の松本稜平容疑者(34)が関与する組織に一時的に所有物件を〝乗っ取られた〟可能性があるという男性が、産経新聞の取材に手口の一端を明かした。 「土地を売却したというのは本当ですか」。昨年2月、50代男性は、知人の不動産業者の問いかけに困惑した。 男性は、大阪市浪速区の日本橋筋商店街(でんでんタウン)に木造2階建ての物件を所有する。複数の不動産業者から売却を打診されたが、応じる気は毛頭なかった。ところが、知人が差し出した登記には、前年秋に自身と関係がない不動産会社に所有権が移転したと記載されていた。 真偽を確かめるため、大阪法務局に向かうと、職員から複数の書類と運転免許証のコピーを提示された。免許証の名前、生年月日、住所は自身と完全に一致する。ただ、顔写真だけが別人の偽物だった。さらに区役所にも足を運ぶと、同じ偽の免許証が使われて実印が勝手に変更されていたことが判明した。 どのように男性の個人情報を入手して免許証を偽造したのか-。経緯を調べた結果、松本容疑者が「(男性への)借金の返還請求訴訟の提起のため」との名目で、男性の住民票の写しの交付を請求していたことが分かった。もちろん、この「借金」に身に覚えはない。 昨年6月に発覚した別の地面師グループも、偽の借用書を役所に提出して本来の所有者の住民票の写しを入手。記載された個人情報を基に身分証を偽造していた。 同じく住民票の写しの交付制度が悪用された形だが、法律の専門家である司法書士が関与していたとなれば、行政の職員が異変に気付くのは一層難しくなる。 男性が一連の事態を把握した時点で、所有物件は複数の不動産関係者に売買が持ちかけられており、手付金が振り込まれる段階まで話が進んでいた。あと少し発覚が遅れていれば、取引が成立していた恐れがある。男性は「司法書士が資格を悪用したら防ぎようがない」と憤った。