「ゾンビたばこ」をめぐる事件で、逮捕されたプロ野球・広島の羽月隆太郎容疑者(25)が29日、送検された。現役選手による薬物摂取疑惑は球界に衝撃を与えているが、警察はゾンビたばこの他のスポーツ界や一般へのまん延を警戒している。 羽月容疑者が若干量を使用したとされるのが、指定薬物エトミデートだ。過剰摂取すると、手足のけいれんなどで歩行困難になることから「ゾンビたばこ」と称される。 捜査関係者によると、警察はゾンビたばこが他のスポーツ界、あるいは一般にもまん延している可能性を排除せず、警戒を強めている。そのためにも羽月容疑者の入手ルートを徹底的に洗い出す構えだという。 法科学鑑定研究所(以下、法科研)の法化学科主任研究員・永山大希氏は取材に対し、エトミデートについて「鎮静・催眠作用が強い」といい、違法薬物では〝ダウナー系〟に分類されると話す。ダウナー系は摂取すると落ち着きを与えるとされ、モルヒネが代表的。対する〝アッパー系〟は摂取すると感情の高揚を与えるとされ、覚醒剤が代表的だ。若者へのまん延が問題視される大麻はダウナー系、アッパー系両方の側面を持つ。 エトミデートは中国などから日本に流入したとされる。「粉末状で輸入され、加工されてリキッド(液状)やカートリッジになった」(永山氏)ものが流通し、それを電子たばこで吸引する。 「SNS上で、カートリッジ1本あたり1万~2万円で売買されています。たばこみたいに買えるので抵抗感が薄らぐ上に携行できるので手軽に利用でき、若年層に広がっています。カートリッジが一般的な電子たばこと見分けづらいので、知らずに使ってしまうケースもあります」 法科研は違法薬物など犯罪科学の研究に取り組んでおり、最近では1月期テレビ東京系「元科捜研の主婦」などで監修を担当。エトミデートを巡っては密売組織トップの男が昨年10月に沖縄県警に逮捕されたことが翌11月、明らかになった後、法科研に一般や企業、スポーツ団体から問い合わせなどが続いたという。 「一般からは『知人の挙動がおかしく感じるので摂取したかどうか調べてほしい』といった問い合わせがあり、企業、スポーツ団体からは社員、所属選手を対象に『抜き打ち検査をお願いしたい』といった依頼があります。尿検査であれば摂取から2~5日間、毛髪検査では男性ほどの短髪であれば摂取から2~3か月程度であれば検出できます。スポーツ団体からは新加入選手を対象にした検査依頼もありました」 スポーツ界の一部ではゾンビたばこへの警戒感を強めていたわけだ。 羽月容疑者は広島県警の調べに「使った覚えはありません」と容疑を否認しているが、本人の関係先からエトミデートとみられる薬物成分を含んだカートリッジが見つかったという。永山氏は「継続して使用したのであれば症状が出るので、否認には違和感があります」と指摘。 エトミデートについて「依存性は強いです」と警鐘を鳴らし「一般的な電子たばこのカートリッジと見分けづらい。人からすすめられても使わないでください」と呼び掛けた。