3年間暴力団に潜入し懲戒免職・服役…「警察組織に梯子を外された」元警察官が語る"潜入捜査"の実態

日本の警察は昨年、捜査員が身分を偽装して犯罪グループに潜り込む「仮装身分捜査」を始めると宣言した。『事件記者、保育士になる』の著者でジャーナリストの緒方健二さんは「日本の警察は1990年代にも、潜入捜査を行っていたことがある。当時、暴力団に潜入捜査をした元警察官に話を聞いたところ『上層部に現場の警察官を守り切る覚悟がない限りやるべきではない。仮にうまくいっても逮捕できるのは組織の下っ端ではないか』と話した」という――。 ■警察庁が開始を宣言した「仮装身分捜査」 闇バイトによる特殊詐欺や強盗の続発を受け、日本の警察は2025年初め、捜査員が身分を偽装して犯罪グループに潜り込んで摘発を目指す「仮装身分捜査」を始めました。 「潜入捜査」の一種で、警察トップの警察庁長官が高らかに開始を宣言しました。海外では潜入捜査を導入済みの国が多いのですが、日本警察は慎重な姿勢を長く保ってきました。通常の捜査を続けてきたものの詐欺被害は増える一方、高校生ら素人を犯罪の手足に使う「闇バイト」の横行で強盗が時に殺人に至る事件も相次いでいます。国民の不安の高まりを受け、警察庁は仮装身分捜査を始めたようです。 導入に際し警察庁は実施要領をつくり、全国の警察本部に知らせました。報道機関にも詳しく内容を説明して大いに宣伝しました。その内容をひとことで言えば、警察官が偽の運転免許証やマイナンバーカードなどを使って闇バイトに応募して雇われたふりをして敵の内情を探るというものです。 現場の捜査員からは「現場をろくに知らない警察官僚が『警察は必死にやっています』感をアピールするために打ち上げた。効果は極めて限定的」と辛辣な声も聞かれます。「敵に手の内を明かしてどうするの」と当方も思います。 ■かつて行われていた「潜入捜査」 あまり知られていませんが、日本警察は1990年代に「潜入捜査」に挑んだことがあります。当時は、組織犯罪の親玉たる暴力団による拳銃使用事件が相次いでいて、一般市民が犠牲になることも少なくありませんでした。所持も使用も違法なはずの拳銃が出回っているのに警察はろくに押収できず、事実上野放しになっていたのです。その現状を何とかしようと、捜査員を暴力団側に潜らせて拳銃情報を取る作戦をひそかに始めたのです。 潜入したひとりが元大阪府警の高橋功一さん(68)です。警察官の身分を隠して1996年5月から約3年間、国内最大の暴力団山口組の傘下組織に潜入しました。ところが高橋さんは99年7月、潜入捜査中の活動にからんで複数の違法行為に関与したとして懲戒免職処分を受け、逮捕されました。覚醒剤取締法違反などの罪で起訴され、有罪判決が確定、数年間服役しました。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加