突然、警察官を名乗る男から電話がきた――。特殊詐欺が増えるなか、茨城県警で署長を務めた寺門均さん(64)=ひたちなか市=が、警察官をかたる詐欺被害の実話をもとに啓発漫画をつくった。若い世代が標的にされている実態を県警公式SNSなどで発信、注目を集めている。 「騙(だま)しの電話は突然に」という作品は、20代女性が特殊詐欺被害に遭う高齢女性のニュースをテレビで眺める場面から始まる。 「お年寄りは、すぐ騙されるからな」。そう思った直後、警察官を名乗る電話がかかってくる。「マネーロンダリングの犯人があなたから銀行口座を買ったと話している。保釈金を振り込めば逮捕されません」。そう告げられ、急いで入金。後にお金をだまし取られたと気づく。 計6ページ。「+」から始まる番号での電話、LINEなどのSNSでの取り調べ……。本物の警察官ではありえない行為を描き、警鐘を鳴らしている。 県警ニセ電話詐欺対策室によると、特殊詐欺は昨年、県内の被害額(暫定値)が前年と比べ約7億円増の約17億6500万円。2016年以降で過去最悪となる見通しだ。 このうち、警察官をかたる手口は被害額の約65%を占める。被害者150人のうち、年齢別では30代の43人が最多だ。40代の22人、20代の21人と続き、比較的若い人の被害が多いのが特徴だ。 寺門さんは大学時代に漫画研究会に所属。漫画を読むのも描くのも大好き。1984年から県警で働き始め、主に捜査2課で詐欺事件を摘発してきた。大子署長や通信指令課長などを歴任し、2022年に退職。現役時代に啓発漫画を描くことはなかった。 昨年5月ごろ、県警の警察官から依頼があった。「古巣の役に立ちたいし、防犯につながるのは、ますますありがたい」。二つ返事で引き受けた。 「漫画は読まれてなんぼ」。県警から被害の実例を教えてもらい、時には午前2時までかかって手描きで仕上げた。昨年9月、県警公式SNSなど(https://www.youtube.com/shorts/dWXTritUtjw)で公開された。 このほか、恋愛感情につけこまれ、定年まぎわの男性が被害に遭うSNS型ロマンス詐欺、副業をきっかけに男子大学生が架空請求でだまし取られるストーリーの2本も描いた。 捜査の裏をかく特殊詐欺の手口は「日進月歩」。「相手は巧妙。手口もたくさん出てくる。明日は我が身。自分だけはだまされないという思い込みを排除し、気をつけてほしい」。新しい作品も執筆中だ。(後藤隆之)