「朝から泣きやがって」障害者施設で虐待、職員に有罪判決 神戸地裁

兵庫県三田市内の障害者福祉施設に入所する男性(21)が2025年9月、男性職員(23)に暴行を受け、左目を失明した。傷害の罪に問われた元職員の上竹英(あきら)被告に、神戸地裁は10日、拘禁刑3年、執行猶予5年(求刑・拘禁刑4年)の判決を言い渡した。公判の証言や取材から事件の背景を探った。 「朝から泣きやがって、と思った」。2月9日の法廷で、被告は小さな声で事件について語った。 判決によると被告は25年9月1日午前5時半ごろ、三田市の障害者福祉施設で、入所者の男性の左目付近に右膝を打ち付け、左眼球を破裂させ、左目を失明させた。 検察官などによると、この日午前5時過ぎ、前日から夜勤に入っていた被告はおむつ替えのために被害者の部屋に入った。すると、被害者が大きい声を上げて泣き出した。被告は布団の上にあおむけの状態になった被害者の顔面に向かって右膝を蹴り下ろした。 被害者の顔面には少なくとも重さ80キロの衝撃が加わっていたと検察官は指摘した。被害者は「嫌」など短い単語での発語は可能なものの、障害により自由な身動きや会話が困難な状態だった。 ◇振り絞るような声で謝罪 弁護側は事件は衝動的なものだったと主張した。以前から被告の世話を被害者が嫌がることがあり、被告はいらだちを覚えていたという。被告は公判で、被害者が泣き出したことで「自分を拒絶していると思った」と証言した。 さらに被告は、上司との関係に悩んでいたが周囲に相談できずストレスをためていたとも証言した。 施設は重度の障害などで医療的ケアや介護が必要な障害者(児)約50人が入所。21年に施設に就職した被告は食事や移動の介助をしていた。もともと介護の仕事に興味があるわけではなく、高校卒業後に未経験、無資格でもやれる仕事を探し、就職時には「こんな自分でも採用してくれるんだ」と思ったという。 公判で検察官は被害者の両親の意見書も読み上げた。「息子の唯一の楽しみはテレビを見たり、動画を視聴したりすることでしたが、唯一の楽しみまで制限されることになりました」 被告は求刑後、振り絞るような声で「被害者と両親の方に、申し訳ありませんでした」と述べていた。 判決で入子光臣裁判官は「被害者に特に落ち度は見当たらず、短絡的な動機に酌量の余地はない」と批判。一方で被害者側に損害賠償金を支払い、反省もしているとして刑の執行を猶予した。 ◇「夜勤中は余裕なくなる」 障害者福祉施設の従業員などによる虐待を巡っては、厚生労働省の調査で2024年度に全国で5870件の相談・通報があり、1267件が虐待と判断された。いずれも前年度より増えている。 県内では相談・通報が229件(前年度比22件減)、虐待と判断されたのは48件(同11件減)。いずれも長期的には増加傾向にあるという。 元厚労省虐待防止専門官で日本社会事業大学の曽根直樹客員教授(障害者福祉)は、施設の職員らによる虐待事件の多くが、夜勤のある障害者福祉施設で発生していると指摘する。「夜勤中は、昼間より少ない人数で介護する場合が多く、眠気も相まって気持ちに余裕がなくなりやすい」と指摘する。 また、今回の事件では被害者が負傷しているのを別の職員がすぐ気付き、施設は被害者の住民票がある自治体と三田市に通報。だが市は原因を突き止めきれず、施設が事件発生から3週間以上たって三田署に相談し、約3カ月後に被告は逮捕された。 曽根客員教授は事件は「虐待事件の中でも大変悪質で重大」と強調。施設の署への相談した時期についても「すぐに通報すべきだった」とも指摘した。「職員同士が円滑なコミュニケーションをはかり、お互いを支え合う職場環境を整え、風通しの良い組織風土をつくることが通報のしやすさや虐待防止につながる」と話した。【木山友里亜】

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