木南晴夏主演の『今夜、秘密のキッチンで』(フジテレビ系)は、どうしてこうなった? 5月21日(木)に第7話が放送されたのだが、結局、ただの不倫ドラマになり下がってしまっている。 大手飲食チェーンの社長(中村俊介)と結婚し、誰もがうらやむ幸せなセレブ生活を送っているかに見えたあゆみ(木南晴夏)だが、実は夫の苛烈なモラハラに精神を擦り減らす日々。 ある日、自宅のキッチンに突然現れた謎のシェフ・Kei(高杉真宙)と出会う。Kei自身が「たぶん、俺はもう死んでるんだと思う」と語っていたため、当初は幽霊かと思われたが、本物のKeiは転落事故により意識不明となってずっと入院しており、要するに生霊だったことが判明。 そんなKei、第5話ラストで意識を取り戻し、生身の体で復活。第6話では霊体だったころの記憶を失った状態であゆみと邂逅。第7話では再びあゆみに惹かれていき、ラストで霊体のころの彼女との記憶がすべてよみがえるという展開になっている。 ■幽霊設定がただの生身の人間に あゆみの夫は控えめに言って「どクズ」。あゆみへのモラハラだけでなく、あゆみの女友達と不倫したり、Keiの転落事故に関与している可能性が濃厚だったり、会社ぐるみで食品偽装している可能性が示唆されたりと、プライベートも仕事もひどい。 だから、あゆみへの同情の余地は多々あるのは事実だが、それでもあゆみと生身のKeiが恋仲になるのだとしたら、それはただの不倫だ。 本作は《大人のファンタジック・ラブストーリー》を謳っており、主人公は既婚者ながらお相手が幽霊(霊体)だったため、プラトニックな純愛ものとして成立していた。 けれど、その幽霊が生身の体で復活して普通の人間になった以上、どんな事情があろうが2人の恋愛は倫理的に間違っている。 当初幽霊かと思われていた恋のお相手と、生身の人間として出会い直す設定は目新しいものの、そのおかげでせっかくのファンタジードラマがただの不倫ドラマになり下がってしまったのだからいただけない。 ■結局、不倫愛は成就しない? さて、そんな本作のラストについて、筆者はなんだかんだであゆみとKeiはお別れして、あゆみはクズ夫と元サヤに戻るのではないかと予想している。 そう予想する理由はいくつもある。 まず、そもそも不倫ドラマというジャンルにおいて、その禁断の愛が実ってハッピーエンドになるケースは少ないという理由が大きい。 とくに社会的な倫理意識が高まっている令和の時代では、ドラマであろうと世間の目は厳しい。よっぽどうまい着地点を見つけないかぎり、不倫愛が成就するエンディングは大炎上しかねない。 実際、本作が放送されているフジテレビ木曜22時のドラマ枠では、近年も『わたしの宝物』(2024年)や『あなたがしてくれなくても』(2023年)といった不倫ドラマが話題を集めたが、両作とも紆余曲折を経て、主人公の女性は夫との元サヤに戻っていた。 ■気になるのは婚約者と娘の存在 また、劇中の設定的にも、あゆみとKeiが結ばれる結末は難しいだろうと思える要素は少なくない。 Keiには意識不明の間も献身的に寄り添ってくれていた婚約者(瀧本美織)がいる。もしあゆみとKeiが引っついてしまったら、なんの落ち度もないどころか彼に尽くしていた婚約者があまりにも不憫すぎる。 仮に、婚約者に裏の顔があって黒い一面が隠されているとしたら、あゆみとKeiは引っつきやすくなるだろうが、いまのところ婚約者は非の打ちどころのない清廉潔白キャラとして描かれている。 そして、あゆみの夫には先妻との間に小3の娘がいる。当初はあゆみになかなか懐かなかったものの、第7話時点で心の距離はだいぶ縮まっており、むしろ血のつながった父との関係性のほうが微妙で、娘の心の寄りどころはあゆみになりつつある。 Keiとの恋愛が成就すればおのずと離婚することになり、せっかく本物の母娘らしい絆が芽生え始めているのに離れ離れになってしまう。そうなると娘がかわいそうすぎるし、主人公の無責任感が際立ってしまうだろう。 ■夫が罪を償い終えるのを待つ? これらの理由を考えると、最終的にKeiと結ばれることなく、夫と元サヤに戻るラストになりそうな予感。 夫がKeiを転落させた犯人だったり食品偽装の首謀者だったりすれば、逮捕されて刑務所行きなんて可能性もありえる。しかし、夫がこれまでの悪行の数々を悔やみ改心するといった展開になれば、あゆみは娘とともに夫が罪を償い終えるのを待ち続けるというエンディングになるかもしれない。 今夜の放送は第8話。物語は終盤に差しかかってくるが、やはりせっかくのファンタジー設定でプラトニックな恋愛を描いていたのに、結局ただの不倫ものにしてしまった制作陣のセンスは疑ってしまう。 ●堺屋大地 恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『文春オンライン』(文藝春秋)、『現代ビジネス』(講談社)、『集英社オンライン』(集英社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)、『コクハク』(日刊現代)、『日刊SPA!』『女子SPA!』(扶桑社)などにコラム寄稿