2019年4月に東京都豊島区で発生した、自動車により母娘2名が死亡した池袋自動車暴走事件は、社会問題となっている高齢者による自動車事故であることから、世間の耳目を集めた。 とりわけ取り沙汰されたのは、運転手が87歳(当時)とかなりの高齢であったことと、その被疑者が旧・通産省の元幹部で、工業技術院長や民間会社の副社長などの要職を歴任していたこと、そして「逮捕されなかったこと」だった。 ほぼ同時期に、兵庫県神戸市で市営バスが横断中の歩行者に突っ込み男女2人が死亡、6人が重軽傷を負う事故が発生したが、こちらでは運転手が現行犯逮捕された。このことから、池袋の事件の被疑者が「特別扱いされているのではないか」という憶測が飛び交い、「上級国民」という俗語まで登場した。 なぜ、逮捕されたりされなかったりすることがあるのか。池袋自動車暴走事件を素材に、逮捕される理由とされない理由を考える。(本文・堀田周吾(東京都立大学法学部教授)) ※本記事は野田隼人・堀田周吾 著「事件・裁判報道の『深層』を読む技術」(現代人文社)より一部抜粋・構成しています。