千葉県にある市川市動植物園が、かつてない熱狂と激震に揺れている。きっかけは今年2月上旬、人工哺育で育ったニホンザルの赤ちゃん「パンチ」の群れ(猿山)への合流をめぐる公式SNSでの発信。 「」。園が綴ったそのメッセージは、瞬く間に世界中へと拡散された。小猿がオランウータンのぬいぐるみを抱きしめ、周囲のサルたちから警戒され、時に厳しく“洗礼”を受ける姿。その愛らしさと健気さは、SNSを通じて瞬く間に人々の心を捉えた。同時に、園はかつてない千客万来の盛況と繁忙に見舞われた。 市川市動植物園で2025年7月に生まれたオスのニホンザル「パンチ」は、母親が育児放棄したため、生まれた翌日から人工哺育により育った。猿山に戻される際、母親代わりの大きなオランウータンのぬいぐるみを肌身離さずに連れ回す姿が愛らし過ぎるとして反響を呼んだ。そのきっかけがSNSのX(旧ツイッター)でパンチの応援を呼び掛ける投稿だった。 「最初は、ぬいぐるみを親代わりにする物珍しさだったと思う。可愛さと可哀想さが混在した感情が、多くの方の心を捉えた」。SNSを最初に発信した張本人であり園の責任者、市川市動植物園課の安永崇課長は、2月当初のフィーバーを静かに振り返る。 だが、人気の波はそこで留まらなかった。3、4、5月と月日が経つにつれ、人々の感情は「成長を応援したい」という、まるで我が子を見守る親のような心境、あるいは母性に通ずる温情へと変化していったと分析する。 その人気ぶりは来園者数に如実に表れた。2025年度の来園者数は、約35万人で前年度比10万人余りの増加。特に、3月だけで9万人超が来場し、その後も例年の平均を大幅に上回る来場者で日々賑わう。 SNSで見知った有志や来園したファンらによる「パンチくん応援団」が自然発生的に結成され、YouTubeやX(旧Twitter)には日々、パンチの動画であふれ返るようになる。「今日はこれができた」「友達になれたみたい」。そんなパンチの文字通り一挙手一投足に、世界中のサポーターが一喜一憂する一大現象へと発展した。英BBCや米ABCなど海外メディアの報道も増えるとともに、海外からの来園者が目立つようになってきた。 しかし、爆発的な「バズ」がもたらしたのは、光ばかりではない。むしろ園を襲ったのは、国内外から押し寄せる過剰なまでの反応と、時に罵詈雑言のような激しい誹謗中傷の嵐だった。 ニホンザルは階層型の厳しい社会性を持つ動物であり、群れのルールを学ぶ過程で、大人や“先輩”のサルから叱られたり、引きずられたりすることもある。それは野生の生態そのものであり、パンチがニホンザル社会の一員として生きていくために避けて通れないプロセスだ。 だが、SNSのショート動画などでその「引きずられている一瞬」だけが切り取られて拡散されると、事情や全容を知らない応援団の一部はパニックに陥った。「動物園は何をやっているんだ」、「パンチくんが可哀想でしょ」。園の対応限界を超え、電話やメールの窓口はパンク状態となった。