2018年11月、日産自動車の元会長 カルロス・ゴーン氏が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の容疑で、東京地検特捜部に逮捕された。内部通報による社内の不祥事をきっかけに「経営者の逮捕」というショッキングな事件は、社内外ともに大きな衝撃を与えた。日産自動車を救ったゴーン氏は“カリスマ経営者”と省され、強大な権力を手に入れた。社内の誰も異を唱えられない構造はやがて、恐怖政治とコンプライアンス軽視を生んでしまう。本稿では、企業急成長の裏で進行していたコンプライアンス軽視と権力集中の実態を明らかにする。 ※本稿は、近岡 裕『日産 最後のサバイバルプラン 転落の真因と復活への提言』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。 ● 混乱期への突入 頻発した不祥事 →「おまえ、もう一度言ってみろ」と胸ぐらをつかんだことも…日産リバイバル・プランの舞台裏、実は現場の若手が立役者」を読む 経営再建計画「日産リバイバル・プラン」を成功裏に終えた後、日産自動車は販売台数の拡大路線を推し進めてきた。その結果、2008年に発生した世界的な金融危機「リーマン・ショック」の一時期を除くと、販売台数は右肩上がりで増加し、2017年度には577万台まで増えた。 ところが、身の丈を超えた生産能力の増強に走った結果、収益性が低下しただけでは済まず、深刻な問題を抱えるようになった。法令順守(コンプライアンス)や企業統治(ガバナンス)に亀裂が生じ、企業価値を毀損してしまったのだ。 問題は2017年から2019年にかけて噴出した。完成検査不正、カルロス・ゴーン氏の逮捕、そして、社長兼最高経営責任者(CEO)だった西川廣人氏の不正による辞任である。 ● 堕ちたカリスマ ゴーン氏の逮捕 権力は腐敗する。そして、日産自動車の会長を務めていたカルロス・ゴーン氏、いや、ゴーン容疑者も、この格言の通りに堕(お)ちた。日本のみならず、世界の経済史に汚名を刻むこととなった。 2018年11月19日、日産自動車は驚きの展開を迎えた。同社を経営危機から救って以来、社内外で「カリスマ経営者」としてもてはやされてきたゴーン氏が逮捕されたからである。金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の容疑で、東京地検特捜部に逮捕された。