危険運転「曖昧な判断」解消へ 法改正で飲酒・速度違反に数値基準 兵庫県内で適用件数増の可能性

酒の影響やスピード違反で事故を起こしたドライバーを罰する「危険運転致死傷罪」に7月、数値基準が新設された。これまでは危険運転に当たるかどうかの線引きが曖昧で、捜査現場や司法の判断にばらつきが生じていた。兵庫県警では近年、年間30件ほどに同罪を適用。構成要件がはっきりしたことで件数が増える可能性があり、捜査員からは「人命をおびやかす悪質運転の適切な検挙につながる」との声も上がる。(森下陽介、金松亜衣) ■県警幹部「遺族の無念、くみ取りやすく」 尼崎市内の県道で1月22日深夜、70代男性が車にひき逃げされ、死亡した。 県警は翌23日、運転していた50代の男を自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで逮捕。その後、男が飲酒によって正常な運転ができなかったと判断し、容疑を同法違反の危険運転致死に切り替えて送検した。 ところが神戸地検尼崎支部は危険運転致死を適用せず、過失致死の罪で起訴した。最も重くて拘禁刑20年の危険運転に対し、過失は同7年にとどまる。県警幹部は「危険運転に当たるとして送検しても、関係機関で判断が異なることは多々ある」と明かす。 □ □ 数値基準を盛り込んだ改正自動車運転処罰法は、7月21日に施行された。 飲酒運転は呼気1リットル中のアルコールが「0・5ミリグラム以上」であれば、一律に危険運転致死傷罪の対象になる。スピード違反は、道路の最高速度に応じて「50キロ以上の超過」か「60キロ以上の超過」で適用される。 警察、検察の判断が割れた尼崎市のひき逃げ事件では発生直後、男の呼気から0・5ミリグラムのアルコールを検出。県警によると、防犯カメラ映像には車がふらつく様子が写っていた。法改正後であれば、危険運転に問われる可能性が高いケースだった。 □ □ 改正前の規定では、アルコールは「正常な運転が困難」、速度は「進行を制御することが困難」な状態で車を走らせることが危険運転とされた。だが曖昧で適用が難しいため、悪質でも「過失」とされることがあり、遺族らから「罪に見合う責任が問われない」と批判が出ていた。 県警が危険運転致死傷の疑いで送検したのは、2025年が36件、24年が31件、23年が24件、22年が31件。今年1~5月は17件で、そのうち飲酒が最も多い8件だった。信号無視が5件で続き、病気と妨害運転が各2件あった。 県警幹部は「以前は捜査を尽くしても危険運転が適用できないケースも多かった。基準が明確になり、遺族や被害者の『きちんと処罰されてほしい』という思いをくみ取りやすくなった」と話す。 新設された数値基準に基づき、県内では今月13日までに危険運転致傷の疑いで男2人が逮捕されたほか、酒酔い運転容疑で逮捕された男が危険運転致傷の疑いで送検されたことが明らかになっている。 【危険運転致死傷罪】1999年に東京都世田谷区の東名高速道路で、飲酒運転のトラックが乗用車に追突し女児2人が死亡した事故などを機に、悪質な運転の厳罰化を求める声が高まり2001年施行の改正刑法で新設。14年からは新たに施行された自動車運転処罰法に移った。一方、大分市の一般道で21年、時速194キロの乗用車に衝突され対向車の男性が死亡した事故では、福岡高裁判決が「過失運転致死」を適用するなど要件の曖昧さも指摘されていた。

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