社説:ICC所長制裁 米の暴挙、傍観するのか

「法の支配」を敵視する米国のあからさまな暴挙である。日本は傍観してはならない。 トランプ政権が、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長ら2人を制裁対象に加えた。7月にICC解体を目指す考えを表明したのに続き、国際秩序を壊す「力の支配」の正当化を強めたと言わざるを得ない。 国連事務総長や欧州連合(EU)は即座に、懸念や批判を強く表明した。 ところが、高市早苗首相は「大変残念だ」と述べるにとどまり、国内外から批判や失望の声が上がった。きのうになって「国際社会における法の支配を一貫して重視しており、措置は日本の立場と相いれない」と改めて言及したが、踏み込み不足だ。 日本はICCにとって最大の資金拠出国であり、赤根氏を含め3人の裁判官を輩出するなど、財政と人材の両面で支えてきた。 大国の横暴におもねらず、法治と人道の「最後のとりで」を守り抜く姿勢を明示し、毅然(きぜん)として米国に撤回を求めるべきである。 制裁は、米国内の資産凍結や金融システム利用の制限など、テロリストと同列の扱いだ。 ICCは戦争犯罪や大量虐殺など人道への罪を犯したとして、ロシアのプーチン大統領、イスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状を出している。 同じ非加盟国の米国も、国際法を無視したベネズエラやイランへの攻撃により、裁かれるのをけん制する狙いといえよう。 米政権は「国家主権への攻撃であり、ICCは悪意を持って権限を乱用してきた」と主張。加盟国にも圧力を強め、アフリカや南米から脱退の動きが出ている。見過ごしにはできない。 高市氏の「残念」発言に、国会の与野党議員連盟は「諸外国に比べて段違いに弱い」とし、抗議と即時撤回を表明するよう求めた。 赤根氏は制裁を「重要なのは、国際的な『法の支配』の終焉(しゅうえん)の始まりにさせないこと」と世界に支援を呼びかけている。 国際ルールを踏みにじる大国が、国連安保理では拒否権を行使し、法治は機能不全に陥っている。中小国や市民の権利と人道を守る「国際法の番人」、ICCの重要性は一段と増している。 高市政権が「同盟への配慮」を優先して米国に物申さないなら、武力行使に傾く大国姿勢の追認と見られ、国際社会の信頼と国益を損ないかねない。

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