人間味あふれる破天荒な司祭を演じた「熱血司祭」シリーズから、繊細な心理描写が求められる作品まで、幅広い役柄を演じ分けてきたキム・ナムギル。2009年の大ヒット時代劇「善徳女王」でピダム役を演じて注目を集めると、2010年の日韓共同制作ドラマ「赤と黒」では主演を務め、その存在感を確立した。 近年もNetflix作品「剣の詩」(2023年)や「トリガー」(2025年)など話題作への出演が続いており、2026年4月には大阪・東京でファンミーティングを開催するなど、日本のファンからも高い支持を集めている。 そんな彼が、凶悪犯罪者の心理に迫る刑事を演じ、「2022 SBS演技大賞」の大賞を受賞した作品が「悪の心を読む者たち」(全12話)だ。 本作は、韓国初のプロファイラーとして知られるクォン・イルヨン氏と作家コ・ナム氏による実話をベースにした同名小説が原作で、1990年代後半の韓国を舞台に、凶悪犯罪者の心理に迫る犯罪行動分析チームの苦悩と葛藤を描いた本格心理サスペンスだ。実際の事件をモチーフに、韓国でプロファイリングという捜査手法が広がっていく黎明期を描いている。 キム・ナムギルが演じるのは、東部警察署の刑事ソン・ハヨン。誰よりも被害者の心に寄り添う鋭い感受性を持ちながら、妥協を許さない性格ゆえに周囲からは煙たがられていた。そんな中、女性が殺害される事件が発生。容疑者は逮捕されるものの、ハヨンは事件に疑問を抱き、犯人の心理を探るため、凶悪犯罪者と直接向き合うことになる――。 本作で際立つのが、キム・ナムギルの抑制された演技だ。「沈黙」と「まなざし」だけで犯人の心と対峙する圧倒的な「静」の芝居。特に、犯罪者と向き合う場面では、静かな佇まいの中に鋭さをにじませ、相手の心理を少しずつ探っていく。言葉の間や小さな息遣いだけで、犯罪捜査の過酷さをにじませる演技力は圧巻だ。 そして、ハヨンを支える存在として印象を残すのが、ソウル地方警察庁の鑑識係長クク・ヨンス役のチン・ソンギュだ。2004年に演劇でデビュー後、舞台や映画を中心にキャリアを積み、「犯罪都市」(2017年)で強烈な存在感を放ったことで広く知られるようになった。2026年にはNetflix映画「チーム・ハズバンド」に主演するなど、現在も映画・ドラマを横断して活動を続けている。 そんなチン・ソンギュが本作で演じるヨンスは、犯罪心理分析の必要性に気付き、犯罪行動分析チームの設立に尽力する人物。周囲の理解を得られないなかでも、犯罪者の心理を分析することが凶悪犯罪の防止につながると信じ、新たな捜査手法の確立に奔走する。 ここで見せるチン・ソンギュの演技も印象的だ。冷静にプロファイリングの重要性を訴える一方、ハヨンを気にかける人間味も感じさせるヨンスを、柔らかな表情と芯の強さを併せ持つ人物として演じている。ハヨンとの深い信頼関係も丁寧に描かれ、作品に人間的な厚みを与えている。 そんな2人が手を組み、犯罪行動分析チームとして凶悪犯罪に向き合っていく過程には、単なる犯人探しではない緊張感が漂う。ハヨンが「悪の心」を読み解こうとする姿は、「なぜこの犯罪が起きたのか」を問いかける意味へとつながっていく。 これまでとは異なる、キム・ナムギルの抑制された演技の魅力を堪能できる作品だ。犯罪者の心に踏み込むことで、自らの心も揺さぶられていく刑事たちの静かな闘いを、今回の放送でじっくり味わってほしい。 文=HOMINIS編集部