名古屋市西区のアパートで1999年、住人の高羽(たかば)奈美子さん(当時32)が殺害された事件で、殺人罪で起訴された安福(やすふく)久美子被告(69)に対し、遺族が損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が8日、名古屋地裁であった。被告側は、事件の事実関係について「包括的に黙秘権を行使する」とした上で、不法行為から20年で賠償請求権が消える旧民法の「除斥期間」が適用されると主張。賠償責任を争う姿勢を示し、請求の棄却を求めた。 事件は99年11月13日に発生。安福被告は約26年後の昨年10月、奈美子さんへの殺人容疑で逮捕された。奈美子さんの夫の悟さん(70)と長男の航平さん(28)は今年3月、奈美子さんの逸失利益や慰謝料、借り続けてきた現場アパートの家賃などを求めて被告を提訴した。 悟さんらは訴状で「被告が加害者であることを秘して生活し、請求する相手を知ることができないまま20年が過ぎた」と主張し、除斥期間を適用しないよう求めた。20年以上経ってから遺体が見つかった殺人事件で、賠償を認めた最高裁判例などを根拠に挙げた。 これに対し、被告側は答弁書で「(判例は)遺体を床下に埋め、塀や目隠しを設置するなどして発覚を妨害した事案で、単に加害者がわからなかった今回とは異なる」と指摘。除斥期間を排除できる事案ではないと主張している。 悟さんは閉廷後、取材に「こちらの主張が簡単に認められるとは思っていないが、他の未解決事件の被害者遺族たちが希望を持てる判例を勝ち取りたい」と語った。 起訴状などによると、安福被告は99年11月13日、奈美子さんの首などを刃物のようなもので複数回突き刺すなどして、殺害したとされる。逮捕直後は容疑を認めたが、その後黙秘に転じた。刑事裁判は裁判員裁判となる見通しだが、日程は決まっていない。(松島研人)