社説:国連と法の支配 ICC守る連携 日本主導で

大国による力の論理に対し、「法による支配」をどう立て直していくか。 国連総会で各国首脳の一般討論演説が始まった。 ウクライナや中東での戦禍がやまず、人工知能(AI)の暴走リスクへの懸念が高まる中、国際社会の決意と行動が問われる。 憂慮すべきは、戦争犯罪などを追及して、法治を体現する国際刑事裁判所(ICC)に対し、米トランプ大統領が圧力を強めていることだ。 初日の演説で、「米国を不当に標的にする邪悪な組織」などの批判を繰り返し、全ての加盟国に脱退を呼びかけた。 8月に赤根智子所長を制裁対象に指定したのに加え、ICC本体まで対象を広げる構えだ。米ドル決済ができなくなれば、業務が大打撃を被りかねない。 トランプ氏がICCを敵視するのは、盟友とするイスラエルのネタニヤフ首相の逮捕状を出したことへの反発に加え、ベネズエラやイランへの武力行使で米関係者の訴追を警戒しているとみられる。国際法違反の蛮行を断罪するICCの重要な役割を逆説的に証明していよう。 この問題で高市早苗首相は、ICCを「一貫して支持」すると演説した。ただ、米国の制裁には触れず、自らの立場の説明にとどまった。 その後の日米首脳会談でも「率直なやりとりを行った」と言うが、具体的な内容は明かしていない。トランプ氏を刺激しないように、という政府筋の配慮意向が伝わっている。 日本はICCへの最大の分担金拠出国で、多くの人材も輩出している。だが赤根氏への制裁発表直後、高市氏は「大変残念」と表明はしたが、強く抗議した欧州諸国などと比べると対応が鈍いとの批判を浴びた。 米国の圧力から南米やアフリカの一部の国ではICC離脱が続く。日本は、法秩序のとりでを守るため、踏みとどまるよう加盟国に働きかけるべきだ。 ICCの危機は、創設81年を迎えた国連の映し鏡である。 全加盟国が決議に従う義務を負う安全保障理事会は、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ攻撃を巡り、常任理事国の拒否権乱発で機能不全が深まり、紛争解決への役割を果たせていない。 総会でも、ブラジルやフィンランドなどの首脳から改革を求める声が相次いだ。大規模な残虐行為に関しては拒否権行使を制限するフランスの提案には、同じ常任理事国の英国を含め128カ国が賛同している。 米中ロが既得権を手放す可能性は低いとみられる。国際世論のうねりを起こすしかない。 年末に退任するグテレス事務総長は「紛争が連鎖的に広がっている」と危機感を示した。 その抑止に向け、日本を含むミドルパワーの国々は、連携して国連改革を前に進めたい。

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