記者「9年前、6人が亡くなった火災を巡り、放火や殺人などの罪に問われた男の裁判が5日始まります。直接的な証拠がないとされる中、公判の行方が注目されます」2017年、北九州市小倉北区のアパート「中村荘」を全焼した火災。このアパートには当時、生活保護世帯や日雇いの労働者らが住んでおり、50代から80代の住人6人が死亡。他に5人が重軽傷を負いました。警察は、出火時間の前後に現場周辺を行き来する不審な人物が防犯カメラに映っていたことから、放火の可能性を視野に捜査を続けていました。そして、事故から7年がたった2024年。警察は、アパートの元住人で別の放火事件で服役中だった井上浩二被告(58)を放火などの疑いで逮捕しました。犯行を裏付ける直接的な証拠はないものの、アパート周辺の防犯カメラの映像解析などで関与が浮上したといいます。その後、検察は放火などのほか殺人や殺人未遂の罪で井上被告を起訴。起訴状によりますと、井上被告は入居者が死亡するかもしれないと認識しながら、アパートの1階にガストーチのようなもので火をつけたとされています。井上被告は捜査段階で「やっていない」などとし容疑を全面的に否認していました。5日始まった裁判員裁判。井上被告は落ち着いた表情で法廷入りし、裁判長に名前や生年月日を問われると、はっきりとした声で受け答えしていました。冒頭、起訴内容について間違いないか問われると「私は関係ありません」と無罪を主張しました。その後の冒頭陳述で検察は、火災は放火によるものであること。井上被告が知人に対し中村荘について「汚い。人間が住むところではない」と管理会社への不満を吐露していたほか「火を付けようか」と放火をほのめかす趣旨の発言をしていたことを指摘しました。一方、弁護側は、直接的な証拠がないことから、火災が放火以外によるものである可能性があることや、火災が発生した時間帯に井上被告は、現場近くに行っていないこと。さらには、井上被告には犯行の動機がないことなどを訴え、今後立証していく方針です。直接的な証拠がなく、判断の難しさが指摘される今回の裁判。今後は、予備日を含め22回の公判が見込まれ、判決は2027年1月14日に言い渡される予定です。