「ゾンビたばこ」騒動の広島、真の「家族」で再建を 続投の新井監督に求められる役割 野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志

今季のプロ野球は、24日開幕の日本シリーズを残すのみとなった。今季を振り返ると、自身も含めて評論家の順位予想を良い意味で裏切ってくれたチームもあった。そういうシーズンは、やはり面白い。一方で、極めて残念なニュースがあった。「ゾンビたばこ」などと呼ばれる指定薬物エトミデートをめぐる広島球団の問題だ。元選手が1月、ゾンビたばこ使用の疑いで逮捕され、2月に医薬品医療機器法違反の罪で起訴された。球団は契約を解除。その後有罪判決を受けた。一報を聞いた際、何て愚かなことを…とやるせない気持ちになった。事態はここで終わらなかった。7月には、3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表の小園海斗らが、逮捕された男らと同席する写真が週刊誌に報じられたこともあった。結果的に、契約を解除された元選手以外にも、一連の件に関係した計4選手に対し、球団は戦力外通告を行った。プロ野球選手の立場がどれほど恵まれた環境の上に成り立っているか。チームの支えを受けながら、多くのファンの応援、子供たちの憧れを背負ってプレーすることがどれほど幸せか。その重みを少しでも自覚できていれば、踏みとどまれたはずだ。球団も事を大きくしたくはなかっただろう。しかし、問題の波紋はあまりに大きく広がった。戦力外通告という決断以外の選択肢はもはや残されていなかったとも言える。私は「チームは家族」と言い続けてきた。親のような心境で選手に接してきた新井貴浩監督にとって、わが子ともいえる選手の過ちは、身を切られるようにつらかっただろう。何度も辞任を申し出ていたという話を聞けば、その胸中と責任感の強さは痛いほど理解できる。しかし、来季も指揮を執ることが決まり、問われるのはこれからである。周囲の厳しい視線を受け止めながら、姿勢と行動で新たな指針を示していかなければならない。前途は険しいが、最も重要な役割は、選手たちが意気揚々とプレーできる環境を整えることである。このチームで野球がしたい-。選手が心からそう思える空間をつくることこそが出直しの第一歩。新井監督の人柄なら、必ず周囲の手助けや協力は集まる。苦境を乗り越えた先に、真の「家族」としての強いチームが再建されることを期待したい。(野球評論家)

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