【社説】邦人記者拘束 ロシアはすぐに解放せよ

ロシアによる邦人記者の拘束は許されない。一刻も早い解放を強く求める。 極東サハリン州ユジノサハリンスクで取材していた北海道新聞の記者が、スパイ容疑で拘束された。首都モスクワで逮捕され、裁判所は2カ月の勾留を決定した。 連邦保安局は記者が日本の情報機関の指示で、クリール諸島(千島列島と北方領土)からウクライナ侵攻に動員された兵士や志願兵の人数に関する情報を集め、伝達しようとしていたと主張する。 詳細な説明をせずに、スパイ容疑と断定するのは到底理解できない。 ウクライナ侵攻に動員された兵士数は公開された情報から把握でき、欧州メディアも報じている。機密情報とは言えず、正当な取材活動とみるのが自然だ。記者の査証(ビザ)も持っている。 言うまでもなく、北海道新聞は政府から独立した報道機関である。同社と高市早苗首相は政府の指示を明確に否定した。ロシアは確かな根拠を示すべきだ。 記者が拘束されたのは帰国直前だった。過去に記者が拘束されたケースでは国外追放になることが多く、勾留されたのは不可解だ。 日本がハッカー集団の関係者とされるロシア国籍の男を大阪市内で拘束し、ドイツに引き渡したことへの報復との見方が出ている。 ロシア外務省は10月上旬、日本政府がロシアへの追加制裁を決めた際に「相応の対抗措置を講じる」と表明した。記者が拘束されたのはその直後だ。「人質」にして外交交渉する意図があるとすれば、卑劣と言うほかない。 ロシアのスパイ罪は、法定刑が懲役10~20年の重罪である。勾留決定により、拘束が長期化する恐れがある。 連邦保安局はウクライナ侵攻開始後の2023年に米紙記者をスパイ容疑で拘束し、懲役16年の判決を下した。この記者はその後、米ロの拘束者交換で帰国している。 日本は交換対象となるロシア人を拘束していないとみられる。交換が成立する可能性は低いだろう。 記者の心身の健康が気がかりだ。在ロシア大使館員による領事面会ができず、拘置所で人道的な扱いを受けているかが分からない。 領事面会は外国で逮捕や拘束された国民の健康確認などのため、領事が本人に面会する手続きだ。国際法で認められている権利である。 外務省は領事面会と即時解放を要請した。ロシアはすぐに応じるべきだ。 ロシアにいる全ての邦人記者が萎縮せずに取材活動を続け、日本国民の知る権利に応えられるように、政府は交渉に全力を尽くしてほしい。 日本とソ連(現ロシア)が国交を回復した日ソ共同宣言の調印から19日で70年の節目を迎えた。日ロ関係を一層悪化させるロシアの行為は残念でならない。

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