トルコ国籍の男性が警視庁高尾署で勾留中に亡くなったのは、適切な医療行為を受けられなかったことが原因だとして、遺族が27日、東京都と診察した嘱託医のクリニックを相手取り、計約5800万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。高尾署の対応の不備や嘱託医の誤診が死亡につながったと訴えている。 亡くなったのはムラット・チチェックさん(当時48歳)。訴状によると、6月25日に物損事故を起こし、入管法違反(旅券不携帯)容疑で逮捕され、高尾署に勾留された。チチェックさんは30日に腹痛などを訴え、翌7月1日にクリニックで嘱託医の診察を受けて急性虫垂炎の疑いなどで薬を処方された。しかし、翌朝に留置場内のトイレで倒れているのが見つかった。司法解剖の結果、死因は腹膜炎だった。 遺族側は、高尾署員はチチェックさんが診察後も腹痛を訴えたのに再度受診させず、1日夜に体温が34度台に低下しても救急搬送しなかったと主張。クリニック側も必要な検査を怠って腹膜炎を見逃したとし、症状が悪化した場合は別の医療機関で受診させるよう強く高尾署に指示すべきだったと訴えている。 提訴後に記者会見した遺族側の弁護士は「身体を拘束した以上、命を守る責任は警察にある。訴訟では責任の所在を明らかにしたい」と述べた。 警視庁はこれまでの取材に、嘱託医から発熱時は連絡するよう指示を受けたが、チチェックさんには発熱症状がなく、1日の就寝前には自ら布団を運んでいたため医師に連絡する判断には至らなかったと説明している。提訴を受けて「訴状が届いていないのでコメントは差し控える」との談話を出した。【安達恒太郎】