名古屋市西区のアパートで1999年、住人の高羽(たかば)奈美子さん(当時32)が殺害された事件は、夫の悟さん(70)の同級生の女が逮捕されて31日で1年を迎えた。 容疑者逮捕の決め手の一つは、現場に残された血痕と容疑者のDNA型が一致したことだ。DNAからまだ見ぬ容疑者の「顔」を浮かび上がらせる。そんな捜査につながりうる「ゲノムモンタージュ」の研究が進んでいる。 昨年10月31日に逮捕されたのは安福(やすふく)久美子被告(70)=殺人罪で起訴。逮捕直後は容疑を認め、その後黙秘に転じたという。 警察のDNA型鑑定は、DNAの身体的特徴や病気に関する情報が含まれない部分が使われる。 東海大の今西規(ただし)教授(基礎医学)は、DNA情報と顔の形状との関連から顔を予測する研究を進めている。現在の予測精度は「完全に似ている」を100%とすると10%未満。顔の各パーツの形や位置は多くの塩基対が関係し再現が難しいが、目の色や髪の性質などは予測しやすい。今西教授は「一部に限れば技術的に有効な水準ではないか」と話す。年齢は数年の誤差で推定できるという。 DNAの捜査利用を包括的に定めた法律はなく、国家公安委員会規則などで、DNA型の扱いは定められている。 高羽さんら殺人事件被害者遺族の会「宙(そら)の会」は、身体的特徴部分に関するDNA情報も捜査に活用できるよう法整備を求める。一方、無罪確定後、DNA型データの抹消を求める訴訟で勝訴した名古屋市の奥田恭正さん(70)のように個人情報保護の観点からDNA型の取り扱いの法制化を求める声もある。 東京都立大の星周一郎教授(刑事法)は、「扱うDNA情報によってプライバシーへの影響も異なる。どこまで捜査利用を認め、どう扱うかなど、法制化も含め議論すべきだ」と話す。(周毅愷、山下寛久)■名古屋市西区の女性殺害事件 1999年11月13日、名古屋市西区のアパートの一室で、住人の高羽奈美子さん(当時32)が遺体で見つかった。死因は首などを刃物で刺されたことによる失血死だった。2010年に殺人事件などの時効が廃止されて捜査は続き、愛知県警は25年10月、夫の悟さんの高校時代の同級生、安福久美子被告(70)を殺人容疑で逮捕した。現場に残された血痕のDNA型と容疑者のものが一致したという。 当初は容疑を認めていたが、その後、黙秘に転じた。鑑定留置を経て、26年3月、名古屋地検が殺人罪で起訴。悟さんら遺族は同月、安福被告に対し、損害賠償を求める民事訴訟を起こし、名古屋地裁で係争中。一方、刑事裁判の日程は決まっていない。