中東情勢を左右するイスラエルの総選挙が行われ、ネタニヤフ首相の与党陣営は過半数を割り込んだ。 国際法を無視してパレスチナ自治区ガザからレバノン、イランへと攻撃を拡大する首相の姿勢に、国民が事実上の「不信任」を突きつけたといえる。 3年前のガザ戦闘開始から初めてとなる総選挙は、建国以来「最右派」とされる政権への評価が争点となった。 ネタニヤフ氏が党首のリクードは第1党を維持したものの、議席を1割以上減らし、首相の求心力低下が鮮明になった。 イスラム組織ハマスによる奇襲攻撃を防げなかった批判や、自らの汚職疑惑から目をそらす戦線拡大への強い風当たりを示していよう。 一方、「反首相」で結束した野党陣営も伸びを欠いた。両勢力とも過半数に届かない拮抗状態で、先行きは不透明である。 注目されるのは、第三勢力のアラブ系政党の躍進だ。選挙前より2倍近い議席を得た。 国内でのアラブ人抑圧への危機感や、パレスチナへの強硬姿勢への反発があるとみられる。総人口の約2割を占めるアラブ系住民と、ユダヤ社会との溝の深まりも見せつけた。 ガザへの非道な攻撃による死者は子どもを含め7万4千人を超える。すでに国連はジェノサイド(集団殺害)と認定し、国際刑事裁判所(ICC)は戦争犯罪などの容疑でネタニヤフ氏に逮捕状を出している。 1年前に「停戦」したが、断続的な空爆や医療・食料の制限が続き、犠牲が絶えない。 ヨルダン川西岸でも、パレスチナ人襲撃が頻発している。総選挙の前日には、イスラエル軍や入植者による大規模殺人や性暴力など「人道に対する罪」を国連機関が認定したばかりだ。 この悲惨な事態は収まるのか。与野党陣営ともハマスへの対応や対イランの姿勢に大差はなく、予断を許さない。 今後、次期政権樹立への連立交渉が本格化する。アラブ系政党は野党陣営に協力する意向を示すが、反アラブ感情が強い党もある。協議が整わねば、来年に再選挙になる公算が大きい。 この間も、ネタニヤフ氏は「暫定首相」にとどまる。イランへの再攻撃を示唆しており、非常事態を口実に政権の「延命」を図ることも考えられる。 ただ、武器を供与し、最大の後ろ盾となってきた米国でさえ、世論の支持はパレスチナがイスラエルを初めて上回った。迫る中間選挙の結果も影響しよう。 イスラエルの国際的な孤立が深まっているのは間違いない。 両陣営とも、その現実を直視し、人命を踏みにじる暴力をやめて国内統治に注力すべきだ。党利党略より、変化を求める民意に向き合わねばならない。 各国も、和平に向けた働きかけをいっそう強めたい。