スティックを手にした高齢者たちが、仲良くボールを打ち合う──。かつて公園の名物だったゲートボールが今、衰退の一途をたどっている。「日本ゲートボール連合の加盟団体に登録する会員数は、統計を開始した1997年の約51万人から、2024年には約3万人にまで減少。約94%も競技人口を減らしています」(全国紙運動部記者) だが、ここで一つ疑問が生じる。ゲートボールの主な愛好者だった高齢者は、むしろ増えているのだ。内閣府の高齢社会白書などによれば、65歳以上の人口は、1997年の1976万人から2024年には3624万人へと約83%も増加。高齢者人口とゲートボール人口は、対照的な推移を見せている。 いったい、何が起きているのか。高齢者の運動事情に詳しいスポーツライターが話す。「今の高齢者は運動に積極的です。スポーツ庁の2025年度調査では、週1回以上のスポーツ実施率が60代で55.1%、70代では65.1%でした。これは、30代の45.7%を大きく上回っています」 運動に積極的ならば、ゲートボール人口が増えていてもおかしくないはずだが──。「笹川スポーツ財団の調査では、70歳以上で年1回以上筋力トレーニングを行う人の割合は、2000年の1.4%から2024年には12.4%に増加。ゴルフも同期間に0.5%から9.0%になりました。年齢を重ねても、好きなスポーツを続ける方が増えているんです」(前同) 高齢者にとって、ゲートボールが唯一のスポーツではなくなったということだろう。では、そもそもなぜゲートボールは、高齢者の間で広がったのか。「ゲートボールは1947年、戦後の物資不足の中でも子供たちが楽しめるようにと、北海道芽室町で考案されました。その後、体への負担が少ないことから高齢者にも広まり、1964年の東京五輪を契機に国が進めた健康促進の動きも追い風になりました。さらに1976年、熊本県で開催された体力づくりの全国大会で紹介されたことをきっかけに、自治体や老人クラブが普及を後押し。1978年には、高齢者を中心に全国的なブームが起きました」(同) だが、こうした背景こそが、ゲートボール離れの一因なのではないかと分析するのは、和歌山県ゲートボール協会普及指導委員で、「すずしんgateball革命家」としてYouTube活動も行う鈴木義幸氏だ。「ゲートボールは高齢者のスポーツというイメージがついてしまったので、“私はまだ高齢者じゃない”と反発される方もいますね」 では、かつてゲートボールを楽しんでいたような高齢者たちは、どこへ向かったのか。「私の体感では、グラウンド・ゴルフが多いと思います」(前同) グラウンド・ゴルフは、1982年に鳥取県で誕生。専用クラブでボールを打ち、ホールポストに入れるまでの打数を競うスポーツだ。日本グラウンド・ゴルフ協会の2024年度登録会員数は約10万人で、ゲートボールを大きく上回っている。「グラウンド・ゴルフが個人スポーツなのに対し、ゲートボールはチームスポーツです。年配になって自由に生きたいのに、なんでまたチームに縛られないといけないんだと感じる方は、個人競技に目が向くんだと思います」(同)