現実は「VIVANT」より怖い…スパイ防止法のない日本で中国批判をした大学教授が受けた尾行、危害予告、中傷

日曜劇場「VIVANT」がいよいよ最終回を迎える。静岡大学教授の楊海英さんは「劇中で繰り広げられる中国系の秘密組織シンシーと別班の攻防は、私には絵空事と思えない。尖閣問題などについての発信内容が問題視されたことで、私が受けてきた監視や工作を明かしたい」という――。■スパイ防止法のない国で直面したこと TBS系の日曜劇場「VIVANT」に登場する中国系の秘密組織「シンシー」は、日本の公安内部にまで手を伸ばし、自衛隊の秘密部隊「別班」のメンバーを拘束する。 荒唐無稽な設定だと笑う視聴者もいるだろう。しかし私には、絵空事と思えない。 前回の記事(「日本はうちの縄張りだ」…尖閣の記事で中国当局に拘束された大学教授が語る監視カメラより厄介な"監視網")で紹介した通り、2008年に内モンゴルで拘束されたとき、私は当局者から次のように告げられた。 「日本にいるから安全だと思わないほうがいい。日本はうちの縄張りだ」 2011年には最終警告を受け、日本へ帰された。 当局者の言葉は、日本に戻ってから少しずつ現実になっていった。尾行、危害予告、講演会への潜入、毎日のように届く中傷。 スパイ防止法がない国で、私が直面してきた監視や工作を明かしたい。■植え込みを飛び越えた男 日本国内で尾行に気づくようになったのは、2020年以降のことだ。 当時、私は東京・中野にある早稲田大学の市民講座で、講義を受け持っていた。講座の日時は、誰でも閲覧できる形で公開されている。 ある日、中野駅で電車を降り、商店街を会場へ向かって歩いていると、妙に近くを離れない男がいた。人通りの多い商店街だから、初めは気にとめなかった。 しかし、男はいつまでも後ろにいる。ある店の前で足を止め、店先の鏡をのぞくと、男が映っていた。しばらく歩き、別の店の鏡を見ても、同じ男がいる。間違いない、と確信した。 商店街を抜けた先に、公園のような広場があった。幸い、誰もいなかった。ここで男をつかまえ、なぜついてくるのか問いただそうと考えた。 振り向いて近づいた瞬間、男は気配を察し、植え込みをひらりと飛び越えて姿を消した。髪がやや長めの中年男で、身のこなしは素人と思えなかった。 私が知るかぎり、尾行は後方からつけるとは限らない。こっちのスケジュールがわかっていれば、先まわりして待ち伏せることもできる。講座予定を公開していた私の行動は、容易に把握できただろう。 私の印象では、雇われていたのは、日本の探偵会社。中国は、マークした人物の調査に惜しみなく金を注ぐ。欧米でも、天安門事件の関係者やウイグル人の活動家を見張っているのは、現地の探偵会社であることが多い。 相手が日本人なら、問いただしても依頼主の名は明かさない。植え込みを飛び越えた跳躍を見るかぎり、身体能力は高そうだった。元警察官の探偵も少なくないと聞くから、揉み合いになれば、私は怪我をしたかもしれない。 国内で私が尾行されたのは、中野を含めて2回。ウイグル人やモンゴル人のデモには、たいてい半グレが現れる。中国の工作員が、自ら手を汚す必要はないのである。 もちろん、駅のホームでは、最前列に立たないことに決めている。

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