去年3月の飲酒運転の車にはねられ女性が亡くなった事故。 遺族は「過失運転致死罪」で送検された男を、刑の重い「危険運転致死罪」で起訴すべきと訴えています。 広く署名を求めて活動する遺族の思いに迫りました。 富山市出身の中田康介さん。 最愛の母が去年交通事故で死亡しました。 飲酒運転で事故を起こした男を厳しい罪に問うべきだと訴えています。 *中田康介さん 「遺族としてはかけがえのない存在。到底、過失で許せるものではない」 母でピアノ講師だった井野真寿美さん(当時62)。 去年3月、富山市総曲輪の国道で横断歩道を歩行中、車にはねられて死亡しました。 事故の連絡を受けた中田さんが病院に駆けつけると変わり果てた母の姿あったといいます。 *中田康介さん 「体中にチューブがつながれた状態で意識がなかった」 事故を起こした当時42歳の男は、飲酒運転で現行犯逮捕されました。 飲食店2軒をはしごしていて、警察の調べに「飲酒運転になるとわかって運転した」と答えていました。 重大な交通死亡事故を起こした場合に問われる罪は主に「過失運転致死傷罪」と「危険運転致死傷罪」の2種類です。 「過失運転致死傷罪」は「必要な注意を怠った運転手を処罰する」もので罰則は最大で懲役7年。 一方、「危険運転致死傷罪」は「故意に危険な運転をした運転手を処罰する」もので懲役は最大で20年です。 42歳の男が送検された際の容疑は「過失運転致死罪」でした。 *中田康介さん 「自ら飲酒をしてハンドルを握るということはすべきではないこのぐらいの処分で終わらせてたまるか」 中田さんら遺族は「危険運転致死罪」での起訴を求め、オンラインや街頭で署名活動を行っています。 2024年12月は富山市の街頭で署名を呼びかけていました。 この日は交通事故で家族を亡くした全国各地の遺族も集まり、署名の協力を呼びかけていました。 井上保孝さん。 1999年に東名高速道路で飲酒運転をした大型トラックの事故で当時3歳と1歳の子どもを亡くしました。 この事故がきっかけとなって飲酒運転への厳罰化を求める声が高まり、「危険運転致死傷罪」が制定され、井上さんは運用の在り方を見守り続けてきました。 *東名高速道路事故 遺族 井上保孝さん 「起訴されていないから遺族感情はある。それだけてなく、飲酒運転を根絶したいという思いが被害者遺族にある。多くの人の賛同を得て、危険運転致死罪が有効に働くような署名活動になっていただけたら」 1月7日、オンラインや街頭で集まった4万6797通の書類が検察庁に提出されました。 *中田康介さん 「ここまでしないと自分たちの思いや母親の失った悲しみは届くことはないのかとどれだけハードルが高くても母のためにできることをしたい」 シンガーソングライターでもあった井野さん。 これまでCDも制作していて、中には中田さんとセッションしたオリジナル楽曲もあります。 *中田康介さん 「母がピアノを弾いて一緒にセッションして、私の方向を向いて答えるみたいな。そういうシーンは今でも思い出せるし、もっとできるはずだと思っていたのですごく悔しい」 「危険運転致死傷罪」はこれまでも適用のハードルが高いとして遺族から改正を求める声が上がっていて、現在法務省による見直しの議論が進められています。 中田さんは今の厳しい要件を満たすべく交通事故鑑定人による調査報告書なども検察庁に提出する予定です。