1月23日、フジテレビ関係者の女性に性加害をしたという疑惑を追及された中居正広氏が芸能界引退を発表。中居氏にインタビューしたこともあるライターの村瀬まりもさんは「本当に驚いた。この引退は中居氏のみならず、SMAPが本当に終わったという意味でもショッキングだ」という――。 ■中居正広芸能界引退を8年前のSMAP解散時から振り返る テレビ放送を録画するハードディスクから、いつまでも消せない番組がある。2016年1月18日の「SMAP×SMAP」(カンテレ・フジテレビ)。いつもは歌にコントにビストロSMAPにと楽しい番組なのに、その数日前、突然、解散すると報道された国民的アイドルグループSMAPは、お葬式のときのような黒いスーツ姿で画面に登場した。 左から中居正広、草彅剛、木村拓哉、稲垣吾郎、香取慎吾。リーダーの中居くんは端っこで体を強ばらせて立ち、木村くんが「先週から、われわれSMAPのことで世間をお騒がせしました」と口火を切った後、吾郎さん(稲垣)、慎吾ちゃん(香取)の後に、しぶしぶといった様子で、ハァ〜っとはっきりわかるようにため息をついてから、コメントを述べた。 「今回の件で、SMAPがどれだけ皆さんに支えていただいているのかということを改めて強く感じました。本当に申し訳ございませんでした。これからも、よろしくお願いいたします」 カメラ目線で言った「これからも、よろしくお願いいたします」は、生放送を見守るファンに向けてなのか、この謝罪劇を仕掛けた誰かに向けてなのか。いずれにせよ、言葉の意味とは裏腹に、反抗的な目つきは隠しようもなかった。その後、つよぽん(草彅)が言った「ジャニーさんに謝る機会を木村くんが作ってくれて、今、僕らはここに立てています」はさらに謎のコメントだった。これは誰に向けて言っているの? ジャニーズ事務所の社長であるジャニーさん? 木村くんだけが無罪ということ? ■「SMAP×SMAP」の公開処刑の時点でフジテレビは終わった このとき、スタジオで何が起こっていたのかということについては、同番組の放送作家だった鈴木おさむ氏の小説『20160118』(文藝春秋)に詳しい。小説の形を取っているが、ほぼノンフィクションだろう。彼らの所属する事務所の“創業者一族”の誰かが、事務所からの独立を計画していた彼ら(木村くんを除く)に、自分たちに謝罪させたのだ。まるでヤクザが「仁義を切れ」「ケジメをつけろ」とでも言うように。しかも、地上波テレビという公共の電波を使って。 【参考記事】《特別公開》鈴木おさむ『小説「20160118」』 そして、それを彼ら本人も、マネージャーの飯島三智氏(現CULEN代表)も、番組スタッフも、作家の鈴木氏も(「これを言わせないといけないのか」と抵抗したということだが)、何よりも番組制作・放送の最終判断をするカンテレとフジテレビも止めることができなかった。今思えば、あの瞬間にこそ「フジテレビは死んだ」のかもしれない。 このスマスマを見守っていた放送作家の町山広美氏はTwitter(現X)で「魔法とけちゃった。何を放送してるか、わかってたんだろうか」とポストした。