ロシアに派兵された北朝鮮軍が戦線から退いたという情報当局の判断が出てきた中で、大規模死傷者の発生で一時退却か兵力交代を準備している可能性が提起されている。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は米国のドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の間の終戦交渉議論を綿密に検討し、追加派兵カードを悩むものと予想される。 韓国国家情報院は3日、中央日報に「先月中旬からロシア・クルスク地域に派兵された北朝鮮軍が戦闘に参加する動向がないものとみられる」とし「死傷者が多数発生したことが一つの理由とみられるが、正確な事項については引き続き確認中」と明らかにした。匿名を求めた政府消息筋も、この日中央日報に「北朝鮮軍兵力損失が相当なものに達したところ、最近では戦線投入が停滞している様子」とし「ただし、追加派兵のために態勢を立て直している可能性も排除することはできない」と話した。 これに先立ち先月30~31日(現地時間)、ニューヨーク・タイムズ(NYT)やCNNなど外信もロシアを助けてウクライナ軍と戦った北朝鮮軍が最近戦線で姿を確認できないと報じていた。NYTは先月30日、匿名の当局者を引用して「過去2週間、北朝鮮軍が戦線で姿を見せていない」と伝えた。 先月31日、ウクライナ現地メディア「ユーロマイダン・プレス」によると、ウクライナ地上軍予備軍協議会のイヴァン・ティモツコ議長は北朝鮮軍の戦線退却に関連して「単なる再編成にすぎない」と評価した。また「生き残った兵力は訓練を受け直したり戦線に再配置されたりして増員を待つことになるだろう」と説明した。ただし、ロシア・クレムリン宮(大統領府)は関連の言及を拒否した。 北朝鮮は昨年11月約1万1000人余りの兵力をロシアに派遣した。情報当局の判断によると、このうち約3分の1である3000人余りが激戦地であるクルスクで死亡あるいは負傷した。死傷者が続出すると兵力損失と内部動揺を懸念して一旦戦線から部隊を退却させたという観測と、追加派兵と戦列再整備に向けた態勢立て直しにすぎないという観測が韓国政府内でも交錯している。 これに関連し、梨花(イファ)女子大学北朝鮮学科の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授は「当初クルスクで北朝鮮軍を動員して実行しようとしていた作戦が終了したと推定される」とし「追加派兵問題は朝ロがすでにある程度合意したが、今後の戦況とトランプ変数により変わるだろう」と予想した。「トランプ大統領が終戦を推進するためには、北朝鮮軍の派兵撤回は当然ながら事前に前提とならなければならない」としながらだ。 北朝鮮が電撃派兵を通じてロシアに突破口を提供した結果、最近の戦況はロシアに有利に流れている。北朝鮮軍がクルスクで人海戦術に動員されている間、ロシアはウクライナ東部ドネツィク(ドネツク)州の攻勢に集中できたという分析だ。ロシアは現在クルスクの半分以上を、ドネツィク・ルハンシク(ルガンスク)州などドンバスの80%以上を掌握した状態だ。外交消息筋は「プーチンはウクライナに奪われたクルスクを完全に奪還してドンバス全域に領土を広げた後に終戦交渉に応じるだろう」と見通した。 これに関連し、派兵された北朝鮮軍が、ロシアが喪失した領土であるクルスク地域だけで作戦を遂行することも、昨年6月朝ロが締結した「包括的戦略的パートナー関係条約」に伴う措置という名分を立てようとする意図があるという分析だ。条約第4条は「一方が武力侵攻を受ければ直ちに軍事的援助を提供する」と規定している。 ロシアはウクライナが自国領土であるクルスクを占領したことを「武力侵攻」とみなしている可能性がある。 北朝鮮軍がドンバス地域まで投入されないのは「合法的条約と国際法に伴う正当な措置」という主張をするための布石という解釈が出ている理由だ。 プーチンが迫る終戦交渉で有利な立ち位置を占められるように金委員長がその役割を十分に果たしたことから、これに相応する反対給付が提供されるだろうという懸念もある。北朝鮮が求める「贈り物リスト」には韓米に比べて劣勢な空軍力補強のための技術、2023年11月初の発射には成功したが最近不振の軍事偵察衛星関連技術、そして大陸間弾道ミサイル(ICBM)完成に必須の大気圏再進入技術などが含まれるものとみられる。 現在首脳外交が停止している韓国としては、ロシアが核心技術移転という「レッドライン」を越えないように徹底的に防御するのが最善の外交戦略になった。先月31日、弾劾政局渦中にも新任の駐ウクライナ大使にロシア通の朴基彰(パク・ギチャン)元駐ロシア公使をあてたことも対ウクライナ外交に空白が生じないようにしようとする措置とみられる。 ロシアも韓国の弾劾政局以降を見通して終戦後の韓ロ関係を正常軌道に復元しようとする計算をするとみられる。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は先月24日、外務省公式サイトを通じて「前例のない韓国の国内政治的危機状況でロシアと関係正常化に関心のある合法的な当局と、韓半島(朝鮮半島)緊張緩和問題を含めて対話する準備ができている」と強調した。