出産した赤ちゃん3人の遺体を高松市の自宅に遺棄し、うち1人を殺害したとして、死体遺棄と殺人の罪に問われた母親で元風俗店従業員、山下あゆみ被告(36)の裁判員裁判が17日、高松地裁(深野英一裁判長)で始まった。山下被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。 起訴状などによると、山下被告は2018年12月上旬と20年4月中旬、23年6月下旬に出産したいずれも男児の遺体をそれぞれポリ袋に入れて、24年2月まで自宅アパートの押し入れに遺棄したうえ、20年に生まれた男児の鼻と口をぬれたタオルで覆って窒息死させたとされる。 検察側は冒頭陳述で、山下被告が無保険のまま病院に行かず自宅で出産した18年は死産だったとし、20年には親が育てられない子どもを匿名で預かる熊本県の「赤ちゃんポスト」の利用を検討したが、電気代の支払いのため旅費が足りなくなって断念したと指摘。1人目の遺体が自宅にあることの発覚を恐れて2人目の殺害に至り、23年にも死体遺棄を繰り返したとして、「匿名で行政に相談するなど他の選択肢もあったのに、安易かつ自己中心的な選択から犯行に及んだ」と主張した。 弁護側は、起訴内容は認めたうえで、量刑について争う方針を表明。山下被告が事件後に発達障害と診断されたとし、「稼ぎの良い風俗嬢を食い物にしようとする男たちの色恋営業のターゲットにされ、暴力を振るわれても依存した」と主張。風俗店のルールを守らない男性客らによって望まぬ妊娠をしたとみられると明かし、「被告は狭い世界で孤独にその日を生きていた。誰にも相談できず孤立出産した」と訴えた。 この事件では、18年と23年に生まれた男児2人の死体遺棄罪を問う初公判が昨年4月にあった。その後、20年に生まれた男児の死体遺棄容疑と殺人容疑で再逮捕、追起訴されたため、裁判員裁判になった。今月21日に判決が言い渡される。(土居恭子)