「牛飼」の名前で活動していたFX投資家がSNSで集めた闇バイトを使い、「点検商法」の手口で高額な工事を契約させ、2億8600万円を荒稼ぎしていた。 特定商取引法違反の疑いで18日、京都府警生活保安課に逮捕されたのは、兵庫県芦屋市の会社役員、斎藤大器容疑者(33)。府警は昨年11月、大阪市のリフォーム会社「新日立建託」の社長ら4人を同容疑で逮捕し、同社から斎藤容疑者に約6500万円が送金されていたことが判明。斎藤容疑者は同社社員らから「オーナー」と呼ばれる実質的なトップだった。 同社はSNSで<年収1億円可能>などとうたい「アポインター」と呼ばれるアルバイトを募集。「闇バイト」約50人を雇い斎藤容疑者が所有する尼崎市の複数のマンションに4、5人ずつ住み込みで働かせ、大学ノートに手書きでびっしり書かれた「点検商法マニュアル」を頭に叩きこませていた。 手口はこうだ。 京都府や神戸市の住宅を訪問したアポインターが<近くで工事をしているものですが、外から見たら屋根がめくれてます。このまま放っておいたら、雨漏りしますよ>と住民の不安をあおり、<近くに親方がいるので無料で点検しますけど>と持ち掛け、リフォーム会社の幹部とバトンタッチ。幹部はクーリングオフの説明や必要な書類の交付を故意にしないまま、修繕の工事契約を結んでいた。 同社は関西各地で「点検商法」を繰り返し、高齢者を中心に言葉巧みに高額な工事契約を結ばせていた。被害者は200人以上に上るとみられている。近隣住民から「ヘンな業者が来ている」と複数通報があり、府警が調べを進めていた。 斎藤容疑者は高卒後、消防士になり、FX投資をして「億り人」となった。ネット上で「牛飼」と名乗っているのは、猛牛のエンブレムで有名なランボルギーニを所有し、仲間に「牛飼いやな」と言われたのがきっかけだったという。 斎藤容疑者はユーチューブで「牛飼の成り上がり物語」といった動画を配信。<さぁ今日は何億稼ごうか><履歴書を送れば大金を稼げる>と視聴者に呼びかけ、応募者を芦屋の自宅に招いて研修を行い、<早かったら月収100万円いくヤツもいる><10代で年収1000万円稼げる>とけしかけていた。 2年ほど前には関西の高級住宅地として知られる芦屋市六麓荘近くに6億円の大豪邸を建設。建物内にはプールや滝があり、壁にはバンクシーの絵画が飾られ、5000万円のロールス・ロイス・カリナン、7000万円のフェラーリ・F8スパイダーなど、複数の高級車を所有していた。 斎藤容疑者の両親は未熟児で生まれた息子に、「器だけでも大きく育って欲しい」との思いから「大器」という名前をつけたそうだが、高齢者の不安をあおって金儲けをするような子どもに育てたつもりはないはずだ。