「殺人をするような子ではないのに…。まさかこんなことになるなんて」。大阪府東大阪市の山中などで国土交通省職員の神岡孝充(たかみち)さん(52)の切断遺体が見つかった事件で、大阪府警は23日、神岡さんを殺害し、現金などを奪ったとして強盗殺人容疑で、大阪市中央区日本橋の無職、大木滉斗(ひろと)容疑者(28)=死体遺棄容疑で逮捕=を再逮捕した。 大木容疑者が死体遺棄容疑で逮捕された今月3日、産経新聞の取材に応じた両親は涙ながらに胸中を語った。母親とは疎遠だったが、父親とは数カ月に1度は会っていたという大木容疑者。昨年11月末に食事をしたという父親は「元気にしていると聞いていた。なぜこんなことになったのか」と声を震わせた。 勉強が得意で、ピアノやテニスに打ち込む元気な一人息子だった。だが、中学3年のとき同級生から「オタク」とからかわれるなどのいじめを受けたのを境に性格が変わった。校舎内で首を吊ろうとして警備員に発見され、一命をとりとめたこともあったという。 地元の子がいないところ、と希望して高校は大阪市内にある有数の公立進学校に入学。担任に反抗することはあったが、「家ではおとなしく、反抗期もなかった」(母親)。 高校卒業後は和歌山大学へ。「人脈を広げ、よい人間関係をつくりたい」と意気込み、1年生で取れる単位をすべて取得。英語の試験では高得点を収めるなど順調な学生生活を送っていた。 だが、寮でのトラブルなどをきっかけに大学2年になると授業を欠席するように。両親には何も話さなかったが、大学の留年が現実味を帯びるにつれて様子はおかしくなっていったという。「『もう距離を置きたい。気持ちが分からないのか』と泣きながら突き飛ばされたこともあった。このままだと留年だと大学の先生にいわれ、人生が終わったと思ったみたいだ」。母親は振り返る。 その後、大木容疑者は大学を中退。母親とは疎遠となったが、父親とは通信アプリ「ライン」で定期的にやりとりをしたり、食事に行ったりしていた。その際は「通販会社のシステムエンジニアとして神戸や姫路で働いている」と話し、変わった様子はなかったという。 父親は「警察から、死体遺棄容疑で逮捕したと聞いたときには本当に驚いた。どうしたらいいかわからない」と涙をぬぐい、母親は「大学を留年してから実家にも帰ってこなくなった。育て方が悪かったのか。どうすればよかったのか…」と憔悴(しょうすい)した様子で話した。