ロシア占領地で子供の洗脳工作と連れ去り 停戦交渉で「人」のことを忘れないで 平和は来るのか ウクライナ侵略3年(4)完

ウクライナの首都、キーウの大学に通うタチアナ(18)=仮名=はロシア軍に占領された東部ルガンスク州の出身だ。露軍が2022年2月に全面侵攻して間もなく、家族とともにロシア南部に避難したが、昨年夏に一人でウクライナに帰還した。 ロシアの学校での「愛国教育」にうんざりし、ウクライナ人であることを理由にしたいじめにも悩まされた。幼い妹と離れるのはつらかったが、「自分はウクライナで生きたい」と強く思った。 帰還支援団体と連絡をとり、ウクライナ北部の国境に1カ所だけ開かれている検問(「人道回廊」)からウクライナに入ったという。 「人道回廊」に向かう途中で故郷のルガンスク州を通り、悲しみが込み上げた。「プロパガンダの看板やプーチン(露大統領)の巨大な写真が至るところに掲げられ、まるで北朝鮮のようになっていた。『領土を広げよう』というスローガンの看板もあった」 この戦争はあまたの家族を切り裂いている。タチアナの場合、両親が親露的だったためにロシアに避難し、自身は家族から離れることを決めた。しかし、自分の意思で思考し、行動できる年齢だった彼女はまだ良い方だといえる。 タチアナの帰還を助けたウクライナの団体「子供たちの声」の共同代表、オレナ・ロズバドスカ(40)は話す。 「露占領地では徹底的なプロパガンダが行われており、小さな子供は自由な思考ができない。噓の歴史教育などによって(ウクライナ人としての)アイデンティティーの危機が起きている」 ■子供の精神を破壊する「キャンプ」 露占領地やロシアから子供を救出する団体「セーブ・ウクライナ」の法律家、ミロスラワ・ハルチェンコ(42)も「占領地の子供に対する露当局の激しい洗脳工作」を問題視している。 学校では露本土から歴史教師を派遣してロシアの公式史観を教え込み、「ウクライナ支持」の言動をしている親について子供に密告させている。 「キャンプ」に子供たちを集めて親から引き離し、「ウクライナはナチスの国であり、ロシアは解放者だ」「ウクライナ人は殺さねばならない」などと刷り込むことも横行しているという。

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