警察官をかたる「おれおれ詐欺」の被害が後を絶たない。広島県内の昨年の被害額は約6億3400万円で、今年もすでに2億円に迫る。2月中旬には安佐南署の警察官に電話があり、表示された番号の下4桁は多くの警察署と同じ「0110」だった。犯人が手当たり次第にかけている実態とともに、信じ込ませる巧妙な手口が浮かぶ。 13日朝、同署刑事1課の向井彩香巡査部長(30)が自宅でくつろいでいると、スマートフォンが鳴った。表示されたのは「+18」で始まる国際電話番号。詐欺だと確信したが、下4桁の番号「0110」に驚いた。 電話に出ると、若い男の声で「シゲタさんの電話ですか」と尋ねられた。「ご用件は」と向井巡査部長が聞き返すと電話は切れたという。翌日昼には「+5」で始まる番号から電話があり、男は「警視庁捜査2課長です」と名乗った。「出勤しているので警電(警察の専用電話回線)でお願いします」と返答すると、通話は切れた。電話は2日間で4度あり、下4桁の番号はいずれも「0110」だった。 詐欺の疑いがある電話がかかってくるのは初めてという向井巡査部長は「警察官の私にまでかかってくるなんて。犯行グループは手当たり次第に電話している」とみる。 県警によると、警察官をかたる詐欺の昨年の被害は57件、約6億3469万円。統計が残る2004年以降で過去最悪となったおれおれ詐欺全体の被害額(約8億798万円)の8割近くに上る。今年に入ってからも警察官を装う手口は1月末までに9件、約1億8309万円の被害が出ている。 電話番号の末尾に「0110」を表示させる手口は昨秋から目立つようになった。警察と誤信させるために何らかの方法で偽装表示しているとみられる。「逮捕されたくなければ保釈金を払え」「口座が特殊詐欺に使われている。指定した口座に現金を移せ」などと要求してくる。 県警の太田貴之減らそう犯罪情報官は「警察官がお金を要求することはない。電話がかかってきても落ち着いて対応してほしい」と呼びかけている。