考察好きのドラマファンの間で盛り上がっており、ネットではおもしろいと高く評価する声であふれているヒューマンクライムサスペンス『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)。 しかし、2月21日(金)に放送された中盤回・第5話まで観ているが、残念ながら筆者はいまいちハマれていない。 元警察官の父・春生(リリー・フランキー)を殺されてしまった大学生・心麦(広瀬すず)。容疑者はすぐに捕まり、春生が22年前に逮捕した資産家一家惨殺事件の犯人の息子だと判明。逆恨みによる犯行だとされていたが、春生が遺した手紙にはその人物は冤罪だと記されていた。 複雑に交錯していく過去と現在の2つの事件、その真相に迫るサスペンス。主演の広瀬をはじめ、リリーや松山ケンイチ、磯村勇斗といった役者陣の演技が抜群にいいし、演出面から醸し出されるドラマ全体の雰囲気もいいので、脱落せずに視聴を続けている。 ただ、それでも作品にグイグイ引き込まれない原因が2つあるのだ。 ■【ネタバレあり】ストーリーのテンポが悪い 1つめの原因はストーリーのテンポの悪さ。たとえば、先々週放送の第4話と先週放送の第5話はあまり物語が動かず、遅々としていた感は否めない。 特にひどいと感じたのは第4話。心麦と春生が常連だった屋台ラーメン店の店主(酒井敏也)がフィーチャーされたのだが、とても冗長だった。 ネタバレになるが、第4話終盤で店主が川で水死体となって発見されるのだが、正直、第3話の段階でこの展開は予想できていた。というのも、第3話はラストで川になにかが浮かんでいる不穏な描写で幕を下ろしており、この時点で店主が殺されたのではないかという予想は、多くの視聴者がしただろう。 第4話は水死体が発見されるところからスタートすると思いきや、時系列が入れ替えられており、第4話終盤でようやく第3話ラストの続きが描かれ、水死体となった店主が発見される。 では、第4話の序盤から中盤にかけて何が描かれたといえば、お涙ちょうだいの店主の過去エピソードを要所要所で挿入するなど、彼をじっくり掘り下げていったのだ。 これに、本当にげんなり。主要キャラとは言えない脇役の “解像度” を上げるシーンが無意味とまでは言わないが、そのせいで物語のスピード感が損なわれるならカットすべきだったのではないか。 第5話も、物語が大きく動いたり衝撃の驚きがあったりすることもなく、わりと淡々と進んでいたので、第4話と第5話で間延びしたドラマという印象が強くなってしまった。 このドラマは同名漫画が原作となっているのだが、全10話ほどになる1クールの連続ドラマにするには原作のボリュームが足りなかったのかもしれない。そのため、無理やり水増しして引き伸ばしているのではないか……そう勘繰ってしまうほどである。 ■【ネタバレあり】事実・疑惑が予定調和すぎる 2つめの原因は、明かされた事実や疑惑が予定調和すぎること。 本作は父の殺害事件と22年前の一家惨殺事件、密接にかかわり合った2つの事件の謎を解明していくストーリーだ。そして、第5話までに事件の根幹にかかわる重大情報が2つ発覚している。 まず、心麦と父・春生に血のつながりはなく、22年前の事件で唯一生き残った赤ん坊が心麦なのではないかという疑惑。まだ真相は明らかになっておらず、心麦が一家惨殺事件の被害者遺族の可能性は十分ありそうだが、はっきり言ってたいして意外性はない。 ヒューマンサスペンス作品で主人公に出生の秘密があるのは “あるある” だし、過去と現在の真相を解き明かすストーリーであれば、主人公が過去の事件にもつながっているというのは真っ先に予想できる。 次に、22年前の事件の犯人とされている死刑囚は冤罪で、べつの真犯人がいるという可能性が示唆されている。ただこちらも、現在の事件で逮捕されている息子が冤罪だというなら、過去の事件で逮捕されたその父親も冤罪で、真犯人にハメられているのではないかという予想は、いの一番にあがってくる。 本作はこの2つをショッキングな事実・疑惑のように扱って、視聴者の興味を引こうとしているのだが、サスペンスドラマを観慣れている人をこれで驚かそうというのは安易すぎないか。 いまのところサスペンスとしてはマンネリな予定調和の事実・疑惑しか出てきておらず、驚愕するようなストーリーではないので、いまいち没入できないのである。 ――今夜放送の第6話は、心麦が22年前の事件の生き残りなのかという謎に、また一歩踏み込む内容になるようだが……。せっかく役者陣が熱のこもった迫真の演技をしているのだから、もう少し物語のスピード感を上げてもらいたいと切に願う。 ●堺屋大地 恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中