やっと19日から停戦が始まった。イスラエルはこの機会に西岸地区併合のために破壊に乗り出し虐殺を拡大しています。ガザでは、「私たちは、まず瓦礫(がれき)の下に埋まった1万人の殉教者たちの遺体を捜索しています」と、パレスチナ市民緊急サービスが最初の仕事を始めました。 停戦と言ってもガザは所謂「戦争」ではなく、イスラエルのジェノサイドを容認した西欧諸国政府に支援を受けたイスラエル占領軍と、軍事力をほとんど持たない包囲された抵抗勢力による占領とジェノサイドに抗する闘いの停戦です。 国連は衛星データを用いて、ガザの建造物の70%が損壊または破壊され、ガザの医療施設の80%以上が損壊または破壊されたと推定しています。5000万トン以上の瓦礫が散乱しており、百台以上のトラックがフル稼働しても撤去に15年はかかるそうです。インフラ再建に800億ドル以上の資金と40年の時間が必要だと17日援助機関が発表しました。世界保健機関は17日に、飛び地にプレハブの病院を運び、1万2000人以上の患者(その3分の1は子ども)を医療避難させることから始めると発表しました。 パレスチナの人々が必要としているのは6週間の停戦ではなく、イスラエルによる空爆、虐殺、占領、征服の全面的かつ永久的な停止です。イスラエル人の全人質が解放されるなら全パレスチナの囚人も同じように解放されるべきです。それでもジェノサイドが一時的であれ停止され、10万を超える負傷者が治療でき、食料や生活物資が供給されることはガザ住民にとってどれほど救いでしょうか……。耐え抜いた抵抗勢力、解放勢力は、屈しませんでした。 他方でネタニヤフ政権は、トランプ政権の登場と連動して占領地併合、抵抗勢力壊滅を更に準備し始めています。今後の米、イスラエルの狙いは、国際刑事裁判所(ICC)のネタニヤフ逮捕状取り下げを画策しつつ第一に、更なる「抵抗の枢軸」の破壊工作をすすめるでしょう。イスラエルの番組「チャンネル12」は、ネタニヤフ政権は、去年のイラン攻撃に加え今年1月9日に3度目の攻撃準備のための特別会議を開催したと報じました。この会議は、イランの核施設攻撃をトランプが支持するか、あるいはトランプ自身が命令するかなど、トランプ政権がイランに対してより攻撃的となるか分析し期待しているようです。 第二に米国とサウジアラビアの「安全保障協力」などで再びサウジとの関係をとり戻し、イスラエルとサウジの国交樹立、「アブラハム合意」を広げ、全アラブ連盟加盟国にイスラエルと国交を結ばせる狙いがあります。 2023年に中国の仲介でイランとサウジが国交回復後、サウジの政治的動きは中東地域に変化をもたらしていました。イランを敵視する反イラン包囲網の一翼だったサウジが、サルマーン皇太子のイニシアチブの下、中国、ロシア、イランとの連携を拡大し、対立より共存の中東秩序作りに踏み出しました。トランプ政権は、今のアラブの要にいるサウジと再度アブラハム合意を目指し、イスラエルとの関係改善を図ろうとするでしょう。 第三の狙いは、国際社会と対決しつつ更にパレスチナ、アラブの領土併合を進めることです。 国連決議や国際法と対決するトランプ・ネタニヤフコンビの2025年からの危険な動きは、まずネタニヤフに逮捕状を出したICCへ報復制裁を強め、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動禁止を求めるイスラエルの動きです。1948年の難民救済に特化したこのUNRWAを廃止する狙いは740万人を超える難民を現在の居住地に同化させ国籍を与えて「難民」ではなくし、「パレスチナ人の帰還の権利」をなくしてしまうことです。その第一歩がUNRWA攻撃なのです。トランプは前政権時からUNRWAの予算の30%である3億6500万ドルを占める米国からの同機関への年間拠出金を停止してきました。イスラエルと一体にUNRWA解体を企むでしょう。パレスチナ問題を根本的に変化させる狙いです。