中国人は「チンギス・ハンは中国の英雄」と本気で信じている…習近平が推し進める「歴史の書き換え」の悪辣さ

中国政府による少数民族の弾圧が続いている。南モンゴル出身で静岡大学教授の楊海英さんは「根底には、歴史を自国にとって都合のいいものにする『歴史改竄』がある」という。ライターの山川徹さんが聞いた――。(前編/全2回) ■中国によって私の故郷の歴史は塗り替えられている ――楊先生は、中国政府による「歴史の書き換え」について、これまで幾度も警鐘を鳴らしてきました。歴史の書き換えは、日本にどのような影響を及ぼすのでしょうか。 【楊】中国政府による歴史の改竄を他人事だと感じて、日本への影響を懸念する人は少ないかもしれません。しかし、2026年には在留中国人が100万人を突破する日本にも降りかかってくる危険性があります。 私は中国東北部の南モンゴル(編集註:中国は「内モンゴル自治区」と呼称。本稿では南モンゴルで統一)のオルドスという町でモンゴル人として生まれました。いま私の生まれ故郷では、まさに歴史の書き換えが行われ、固有の文化や紡いできた歴史が塗り替えられようとしています。 中国には56の少数民族が存在します。南モンゴルには漢族、モンゴル族、半周族などさまざまな民族が暮らしています。自治区内の小中学校は、中国語学校とモンゴル語学校にわかれていました。モンゴル人の子どもはモンゴル語学校に通ってモンゴル語で授業を受け、モンゴルの歴史や道徳などを学んでいました。 しかし、2020年9月から、突然、南モンゴルのすべての小中学校でモンゴル語やモンゴル史の教育が禁止されたのです。 歴史の授業はもともと中国史がメインだったので、モンゴル人は日本人よりも自民族の歴史を知りません。それが完全に消えることになる。 道徳の授業では、共産党の思想が唯一の正しい価値観であり、中国共産党だけが人民を幸せにできるというプロパガンダを注入されているのです。

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