投獄、敗戦、無一文から逆転 日清食品創業者・安藤百福が生んだ即席麺市場が年1200億食に成長するまで

生物界における突然変異のように、一人の個人が誰も予期せぬ巨大なイノベーションを起こすことがある。そのような奇跡はなぜ起こるのか? 本連載では『イノベーション全史』(BOW&PARTNERS)の著書がある京都大学産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンスの特定教授・木谷哲夫氏が、「イノベーター」個人に焦点を当て、イノベーションを起こすための条件は何かを探っていく。 今回は、日清食品創業者の安藤百福氏に注目。彼が生み出した世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」は、何が画期的だったのか。そして、この発明をきっかけに、世界の即席麺市場は年間約1200億食を超える巨大マーケットへとどう成長していったのか。 ■ 安藤百福とフードテック分野の最前線 今回は日清食品創業者でインスタントラーメンを発明した安藤百福のイノベーションを取り上げる。チキンラーメンは安藤が48歳、カップヌードルは61歳の時の発明である。50才で隠居するのが普通だった時代に、決して若くはない年齢で、時代の一歩先を行く新商品を、二度にわたって生み出したのである。 本稿では改めて、安藤の発明が持つ今の時代にとっての意味合いは何か、特に開発目標=製品コンセプトの設定の仕方や、フードテック分野のイノベーションとの関係などについて考えてみたい。 フードテックは現代の超スピードで進行しているイノベーションの中でも、最も盛り上がっている分野の一つだ。例えば、イスラエルのスタートアップ企業Hyper Food Robotics(ハイパーフードロボティクス)は、ピザ製造ロボットを開発している。コンテナサイズのユニット内で、ピザの製造から提供までを完全自動で行い、完全自律型のロボットレストランを開発・運営している。 このロボットレストランには、120個のセンサーと20台のAIカメラが搭載されており、ロボットアームやベルトコンベアと連携して、1時間に最大50枚のピザを製造・販売することが可能という。 ロボットはピザの生地を伸ばし、それを台に移して、生地の上に注文通りのトッピングを乗せていく。そして、ロボットアームがピザを窯の中に入れ、焼き上がったピザは自動カッティングマシンで切り分けられ、客に提供される。 また、40分ごとに、化学物質が含まれていないオゾン水システムでキッチン全体が洗浄される。この仕組みにより、人手不足の課題に対応しながら、効率的で衛生的なファストフードの提供を目指しているのだ。 また、古賀大貴氏が創業したOishii Farm(オイシイファーム)は、サステナブルな農業の実現を目指し、植物工場で高品質なイチゴを生産し、アメリカのニューヨークで販売している。

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