1985年に熊本県内で男性が殺害された「松橋(まつばせ)事件」をめぐり、再審無罪が確定した故・宮田浩喜さんが、国と県に損害賠償を求めた訴訟。14日の熊本地裁判決で品川英基裁判長は、検察側が起訴後に宮田さんの自白と矛盾する客観的な証拠を見つけた後も、それを公判で明らかにすることなく審理を続けたことについて注意義務違反を認め、国に約2380万円の賠償を命じた。 元刑事裁判官の水野智幸・法政大学法科大学院教授(刑事法)は今回の判決について、「検察官が自白と矛盾する客観的証拠を入手した後も、被告人を有罪とする訴訟活動を続けた点を違法と断じた点は評価できる。検察官の職責について、ここまで言いきる判決は珍しいのではないか」と話した。 その一方で判決は、熊本県警が宮田さんに対し、逮捕前の任意の取り調べを計約74時間にわたって続けたことについて、「追及的な取り調べを継続していたと推察される」と指摘したものの、「自白を強制したと認められる事情や証拠はない」などとして違法性を認めなかった。 この点について、水野教授は「客観的な証拠が乏しい中、被告人の迎合的性格を利用して、任意で長期間の取り調べを続けて自白させた点などは、当時であったとしても違法と判断されるのではないか」と疑問を呈した。(小川裕介)