「スーパーサラリーマン清水」を名乗り、悪質リフォームを繰り返したとみられる清水謙行容疑者(49)が建設業法違反容疑で逮捕された。 暴力団対策課によると、清水容疑者ら5人は、2023年10月に神奈川県知事に無許可で屋根工事を693万円で、11月に国土交通大臣に無許可で外壁塗装などの工事を530万円で、それぞれ請け負った疑いがある。 建設業法では500万円以上の工事を請け負う業者に、国や都道府県からの認可を得るよう義務づけている。清水容疑者らは、複数のリフォーム会社を束ねた「清水会」という組織を作り、従業員は多いときで150人。悪質リフォームで得た売り上げは、5年間で約100億円とみられる。 清水容疑者は、東京都内のタワーマンションに住み、SNSでは自身の高級車や高級時計など、派手な生活をアピールしていた。しかし裏の顔は、「悪質リフォーム界のカリスマ」的な存在だった。SNSでは、自撮りする清水容疑者の後ろで、大人数が「もっと金を稼ぎたい」「本気でやれば役職にもなれる」と意気込んでいる朝礼の様子も上げられていた。 誰でも出入りできる貸しビルに入る清水容疑者が実質経営する会社は、人の出入りなどは確認されず、空き部屋状態になっていた。会社が入居する貸しビルの関係者が、匿名かつ音声なしを条件に話してくれた。「半年以上前に移転した。社員たちがゴミをあちこちで捨てる行為や、車をビルの前に止めっぱなしにするなど苦情があった」。 近隣にある店の店員は「社員は20〜30代が多く、ヤカラっぽい感じ。手にジャラジャラ付けてる感じの人たち。朝礼の声が大きく、窓を開けて朝礼するので、迷惑している人は多かった」と振り返る。 従業員は、飛び込み営業をする“アポインター”や、契約を結ぶ“クローザー”などの担当に分かれて、「屋根の瓦がずれている」などと不安をあおり、不必要な工事の契約を結んでいたとみられる。 元徳島県警捜査一課警部の秋山博康氏は、2年前に清水容疑者と一度だけ会ったことがあるという。元暴力団を支援する秋山氏のもとに、知人を介して訪ねてきたそうだ。「本人いわく『元暴力団だ。きれいに足を洗って、今は暴力団との付き合いは一切ない』。まっとうな仕事をしていて、『屋根のリフォームをやっている』と(言っていた)」。 社員の集め方については「インスタグラムで募集して、面接して社員にする。そのためにも、自分の豪遊しているところをアップする。『うちの会社に入ればお金儲けができる』とアピールするために、インスタに上げると言っていた」そうだ。 その数カ月後、秋山氏のもとに、ある人物から情報があった。「『最近刑事が会社や家に張り込んだり、尾行されたりされている』と本人が(清水容疑者が)言っていたと。内偵捜査されていることを、うすうす勘付いていたのではないか」。 実は今回の逮捕劇までに、少なくとも2年間の内偵捜査が行われていた可能性があるという。清水容疑者は複数の会社を実質経営していたが、2024年2月に突如、解散を宣言。そして、その3カ月後の5月、関係先への家宅捜索が行われた。 いま悪質リフォーム業者による事件は全国で増加し、摘発数は2024年に66件(前年比28件増)で過去最多となった。消費者被害に詳しく、悪質リフォーム被害の相談を受けている岡田崇弁護士は、その手口を「『近所で屋根工事をしている。ついでに屋根を見せてほしい』と言って、『このままなら屋根は飛んでしまう。大ごとになる』といって契約させるのが典型的な手口だ」と説明する。さらに「わざと(屋根や外壁に)傷をつけるという話も聞く。屋根や床下など、実際(客の)皆は見ないため、『工事しないといけない』とウソの写真を出すこともある」そうだ。 清水容疑者は今回、暴力団対策課によって逮捕された。その真意について、秋山氏は「暴力団対策課は、俗に言う“マル暴”だ。マル暴が中心にやるということは、いまだに暴力団と付き合いがあるか、もしくは今はやりのトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)の可能性がある」と推測した。 (『ABEMA的ニュースショー』より)